沈黙が降りた。チェーザレはなにかをいいかけて、その言葉を飲み込んだ。

「一人で乗り込む方が成功率が高い」

ミケーロが断言するとチェーザレに少しの逡巡が走った。

「こんな小さな件にリスクを犯す必要はない」

「俺一人を失うことがリスクになんかならない。使い捨ての駒だよ、おれは」

「いや、だめだ」

チェーザレは珍しく感情的になっていた。

「悪いが‥…おまえの主観で俺によけいな付加価値を付けないでくれ。正直不快だ」

残酷とも言えるほど鋭い言葉をぶつけた。しかし口調にはなんの猛りもない。
チェーザレはしかしそれほどで傷つくほどにセンチメンタルな男ではなかった。いや、むしろそれで彼本来の冷酷性を取り戻した。

「そうかならば一人でいけ。だがな失敗し、組織に恥を塗って見ろ。たとえ生き延びたとしてもその時は俺がお前の命をとる」

冷たい氷のような顔。それがチェーザレだ。

「わかった」

そういい残すとミケーロは音もなく闇にかき消えた。

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