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サークルチェンジ #28

[586]  Hollow Man  2009-07-19投稿
隼人と仁藤はいつもの練習メニューをこなし、ブルペンへ。

隼人は立ち投げで肩慣らしした後、この日は40球。

「どうだ?疲れたか?」
クールダウンのキャッチボールをしながら仁藤が隼人に状態を聞いてくる。
「全然物足りないっすよ。」
隼人はまだ投げたくてしょうがない。しかし仁藤は徐々に球数を増やし、状態を確かめながらという姿勢。普段の荒っぽさとは違い、ここは慎重だ。


中1日空けて今度は50球。
仁藤は隼人の変化に気づく。
「こいつ、球数が増えれば少々へばってくるかと思いきや、逆に球威が増してきやがる。しかも構えた所にビシッと。」

隼人はリリースの際、踏み出した左足の親指の付け根にグッと力を込める。
これは隼人が中学時代に受けた野球教室で教わったものだ。
以前は制球難で試合を壊すことが多かったが、それ以来球筋が安定し、球威も増した。

一方隼人は、球数が増えるに従い威力を増していく自分のボール球を、仁藤が難なく捕球してしまうことが面白くない。
「仁藤さん、ミットの音すんげー気持ちーけど、俺の球ってショボイですかね?」

「ハハッ、もしお前の球
がショボイと感じてるなら、とっくにクイックの練習させてるぞ!?」
仁藤は隼人の疑問を笑い飛ばす。

「お前の球威がありゃ、その辺のチームぐらいなら真っすぐだけで押せる。相手が盗塁仕掛けてきても、お前の速球と俺の肩で防げる。」

仁藤はセカンドへの送球タイムが1.9秒の強肩。
隼人に球威がなく、変化球に頼らなければいけないなら、相手チームが盗塁を仕掛けてきた場合の成功率は上がるため、クイックモーションのマスターは急務だろう。

仁藤が隼人にクイックモーションを練習させない理由は、自分の肩に対する自信と、隼人がまだ硬式球に完全に慣れていないということ、そして何より隼人の投げるボールへの信頼からだった。
「まっ、今は余計なことは考えず、一球一球しっかり投げときゃ大丈夫だ。」



(この人、なんて頼もしい人なんだ。なんか鎧着た武士みてーだ…)
隼人の目にはキャッチャー用の防具を身につけた仁藤が、さながら甲冑姿の武将のように映った。



再び中1日空け、土曜日。
60球を投げ込んだ隼人は練習後、正太の家を訪れていた。

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