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暁の剣 最終話

[563]  朝倉令  2006-07-22投稿


「ふん、…仲間から話は聞いておろう。
兄、平松玄斎が仇、結城兵庫(若い頃の名前)!、尋常に勝負致せ!」


「貴殿は言葉の使いようを知らぬ。
どこが尋常か?」



兵庫ノ介は、おのれを取り囲んだ十名ばかりの浪人と、弓矢を向けた三名、槍を携えた四名に鋭い眼光を飛ばしていた。


残りが橘きょうだいと伍助を囲んだ様子。



「ほざけ! うぬが卑怯なる手を用い、兄者を討ち果たしたに相違ないわ!

兄、玄斎に成り代わり、この平松源次が相手致す!」


「言うても聞く耳もたぬ様じゃな…

伍助、存分にせいっ!」

「へェ!」



その声を合図に、橘きょうだいと伍助が兵庫ノ介にならい、鉢巻きの上に巻き上げていた紗の虫除けを引きおろす。



直後、つぶて打ちに伍助の放った卵が、立て続けに敵の体に命中していった。



にわかにブ〜ンと蜂の羽音が敵方から響き、浪人衆が恐慌をきたし始める。


兵庫ノ介たちの、白装束に虫除けの面覆いは蜂に対する備えであったのだ。



「うわッ、お、おのれェッ! 小癪(こしゃく)な真似を!」



スズメ蜂の襲撃を振り払う間に、兵庫ノ介が片ッ端から兜割りの痛撃をお見舞いしていった。



「結城ッ!いざ勝負!」



蜂にやられて別人の如く顔を腫らした平松源次が左手を出し、すくみの術を掛けようとした。


「カアアアァーーッ!!」

はらわたが引き千切れる程の気合いをいち早く放つ兵庫ノ介。


おのが術をまともに返され、ピクリとも動けなくなった平松。



「お二方!今にござる」

「はいっ!」


兵庫ノ介の声に応じた橘姉弟。





(終わりじゃな……)




橘小太郎の振り上げた白刃に、朝の陽光が一瞬キラリと反射していた。



「ふむ、…暁の剣、か」




結城兵庫ノ介は、小太郎の剣さばきに末頼もしさを覚え、ニヤリと苦み走った笑みを浮かべていた。







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