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お約束家族?

[466]  leap  2006-07-23投稿
 気まずい空気が流れる。
 二人が少し悲しそうな顔をしたような気がした。
 そんな顔したって私は怯まないから。
「何? ホントのことでしょ!?」
 すると両親は私の目の前でヒソヒソ話を始めた。
 そういうことは少し離れてしてよ。
「メグミ、よく聞いてくれ」
「なに?」
 父は俯き加減で声のトーンを落として話始めた。


「私たち家族は皆、平凡とはかけ離れた生活を送ってる。お母さんは『パートのくのいち』として生きてきたし、父さんは『公務員』、お兄ちゃんだって『女子高校生』として頑張ってる」
「はぁ?(ツッコミどころ満載だけど)」
「そして、お前だって本当は……いや、皆まで言うまい。せめてメグミには平凡でベタな生活を送ってほしいのだっ!!」
「これのどこが平凡なのよ!!」
 すると急に父は私の両肩を掴んだ。
「平凡とは違うか? だが、ベタだ!! 普遍なのだよ!!」
 力強く掴む父の手を私は体で感じる。
 一瞬父が大きく見えた。もの凄い迫力に私は何も言えない。
 久し振りに父が父親らしく見えた。
 かなり強引だけど。
「ベタに生きれば先の展開に焦らず安心して生きられる。非常時に生きる家族の気持ちも汲んでくれ」
「お父さん!」
「メグミ!」
 父は両手を広げ、私は駆け寄る。


 私達は分かり合えたのだ。
 家族を思いやること。
 いいえ、何より普遍的に生きること。
 それがどんなに素晴らしい事か!!
 予定調和? ノンノン。
 分かっていることを楽しめる。
 平凡を楽しめるって最高じゃない!!


 そして二人の距離が縮まる。私は父の両腕に包まれるその瞬間――


 私は父へボディーブローをアッパーカット気味に打ち込んだ。
 拳には重い感覚がのしかかる。
 私はそれに負けないよう全てを解放すべく腕を振りぬいた。
「ぐおぉぉぉっっっっ!!」
 父は一瞬体を浮かせた後、膝から前のめりに崩れ落ちた。
 お尻を突き出した格好でうつぶせに軽く痙攣してる。
 私は倒れる父へ近づいて上から見下ろす。


「私はベタが大嫌いなの! あんなのただパターン化して怠けてるだけじゃない!!」
「うぅ……大体あってる」
「お父さん肯定しちゃ駄目っ!!」
「か、母さん。しかし……」
 私は父の横を通り過ぎ玄関へ走る。
 これで父は片付いた。

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