僕の闘病日記
一時間ぐらい前に目を覚ました僕は、病院のベッドの上にいた。
僕は大阪市内に住む14歳。まだ毛が生えてきたばかりの年頃の男だ。
なぜだろう。確か今日はテストで早く終わったから、12時にはいつもの駄菓子屋の前にいた。
僕は下校途中にいつもその駄菓子屋に行く。母を待つためだ。
母は87歳。専業主婦をしている。みんなは、おばあちゃんとか馬鹿にするが、僕にとってはたった一人のお母さんだ。
僕を産んだ時、母は73歳だった。確かに高齢出産かもしれない。しかし元気に産んで、育ててくれた母を僕は誇りに思う。
僕が生まれた時、母のおっぱいは垂れ下がっていたと父に聞かされた。若い頃はデパートの婦人服売り場のチラシで、モデルをしていただけある豊満な母の乳は、僕を産んだ時にはおへそ辺りまで垂れていたと、父は言う。僕はその乳を上に持ち上げ、母の左肩から『ヒョイっ』と顔を出して飲んでいたと、父はよく聞かせてくれた。
父は、その時18歳だった。
母は毎日その駄菓子屋に僕を迎えに来てくれる。
杖を点いて来てくれる。
そして勉強の後に食べるお菓子を買ってくれる。
その後、水筒に入った手作りのジュースを飲むと、僕は眠くなる。ここからはいつも覚えてないが、杖を点いた母がおんぶして連れて帰ってくれるらしい。だから僕は駄菓子屋からの帰り道を知らない。
『いつものパターン』だ。
そう、いつものパターンなら今頃、お家のフカフカした布団で目が覚める。
でも今日は違った。病院のベッドの上だった。
誰もいないようだ。
病室を見渡すと、母の杖は置いてるがいない。
お線香のような、母独特の匂いはかすかに残っているが見当たらない。
どこの病院なんだろう。誰の声も聞こえないし、足音も聞こえない。
その病室は静かな時が流れていた。
僕はふと気付いた。
『うぉぉぉ〜、寂しいぃ〜』
僕は寂しさという感情を手に入れた。
それと引き換えに、母は死んでいった。
富貴恵、87歳、永眠。
僕は大阪市内に住む14歳。まだ毛が生えてきたばかりの年頃の男だ。
なぜだろう。確か今日はテストで早く終わったから、12時にはいつもの駄菓子屋の前にいた。
僕は下校途中にいつもその駄菓子屋に行く。母を待つためだ。
母は87歳。専業主婦をしている。みんなは、おばあちゃんとか馬鹿にするが、僕にとってはたった一人のお母さんだ。
僕を産んだ時、母は73歳だった。確かに高齢出産かもしれない。しかし元気に産んで、育ててくれた母を僕は誇りに思う。
僕が生まれた時、母のおっぱいは垂れ下がっていたと父に聞かされた。若い頃はデパートの婦人服売り場のチラシで、モデルをしていただけある豊満な母の乳は、僕を産んだ時にはおへそ辺りまで垂れていたと、父は言う。僕はその乳を上に持ち上げ、母の左肩から『ヒョイっ』と顔を出して飲んでいたと、父はよく聞かせてくれた。
父は、その時18歳だった。
母は毎日その駄菓子屋に僕を迎えに来てくれる。
杖を点いて来てくれる。
そして勉強の後に食べるお菓子を買ってくれる。
その後、水筒に入った手作りのジュースを飲むと、僕は眠くなる。ここからはいつも覚えてないが、杖を点いた母がおんぶして連れて帰ってくれるらしい。だから僕は駄菓子屋からの帰り道を知らない。
『いつものパターン』だ。
そう、いつものパターンなら今頃、お家のフカフカした布団で目が覚める。
でも今日は違った。病院のベッドの上だった。
誰もいないようだ。
病室を見渡すと、母の杖は置いてるがいない。
お線香のような、母独特の匂いはかすかに残っているが見当たらない。
どこの病院なんだろう。誰の声も聞こえないし、足音も聞こえない。
その病室は静かな時が流れていた。
僕はふと気付いた。
『うぉぉぉ〜、寂しいぃ〜』
僕は寂しさという感情を手に入れた。
それと引き換えに、母は死んでいった。
富貴恵、87歳、永眠。
感想
感想はありません。