子供のセカイ。41
王子が知っているのはせいぜい、この道のりの行く末が“生け贄の祭壇”だということくらいだ。まあ出会ってそんなに時間が経っていなかったり、ハプニングの連続で話す時間がなかったのも本当だが。
美香は王子に説明しようと口を開きかけたが、その時、地面に放り出したままにしていた細身の剣を取りに戻っていたジーナが、二人のすぐ脇に立った。
「どういうことだ?まさかお前、舞子に近しい者ではないよな?」
見下ろしてくる目は真剣で、かつ嫌悪感も露に鼻にシワを寄せていた。王子もあまりいい顔をせずに美香をじっと見つめている。――舞子はこの世界の住人に嫌われている……?そういう結論に達すると、胃がきゅうっと縮まるような悲しみが美香を満たした。いつもそうだ。あの子はいつも一番大事な「最初」で失敗して、つま弾きにされてしまう……。
「……舞子は私の妹よ。」
そして美香は、いつもそうしてきたように、誇らしげにそう言った。自分が姉だと宣言することで、舞子を救えることが多かったからだ。少なくとも、“真セカイ”の方では。美香はその地域では知らない人がいないくらい「できる子」として有名だったし、その美香が姉となれば、ドジで我が儘な舞子はイジメの標的にならずに済んだのだった。
二人は最初何も言わなかった。言えなかった、という方が正しいような表情で、美香をじろじろと眺めてくる。
美香が居心地悪そうに体をもじもじさせると、ようやく王子が口を開いた。
「……舞子のお姉さんが、なぜこんな所に?」
その、突き放すような、今までの親しみに満ちた話しぶりから千歩も遠のいたような慎重な物言いに、美香は泣きたくなる気持ちを必死に押さえた。
「私は舞子を連れ戻しに来たの。」
「三年も経ってからか?」
ジーナは単純そうに見えるが、意外に疑り深い性格なのか、眉間にシワを刻んだまま尋ねた。美香はむきになって言った。
「おかしいのはそこよ!私は舞子が“子供のセカイ”に入ってから、そんなに時間が経たない内に後を追ったはずなのに、何で三年も経ってるの?」
この時間差だけが唯一の謎だった。支配者、というのは、舞子の特別な能力を考えれば納得できないことではなかったが、時間は違う。勝手に変えられるはずがない。
美香は王子に説明しようと口を開きかけたが、その時、地面に放り出したままにしていた細身の剣を取りに戻っていたジーナが、二人のすぐ脇に立った。
「どういうことだ?まさかお前、舞子に近しい者ではないよな?」
見下ろしてくる目は真剣で、かつ嫌悪感も露に鼻にシワを寄せていた。王子もあまりいい顔をせずに美香をじっと見つめている。――舞子はこの世界の住人に嫌われている……?そういう結論に達すると、胃がきゅうっと縮まるような悲しみが美香を満たした。いつもそうだ。あの子はいつも一番大事な「最初」で失敗して、つま弾きにされてしまう……。
「……舞子は私の妹よ。」
そして美香は、いつもそうしてきたように、誇らしげにそう言った。自分が姉だと宣言することで、舞子を救えることが多かったからだ。少なくとも、“真セカイ”の方では。美香はその地域では知らない人がいないくらい「できる子」として有名だったし、その美香が姉となれば、ドジで我が儘な舞子はイジメの標的にならずに済んだのだった。
二人は最初何も言わなかった。言えなかった、という方が正しいような表情で、美香をじろじろと眺めてくる。
美香が居心地悪そうに体をもじもじさせると、ようやく王子が口を開いた。
「……舞子のお姉さんが、なぜこんな所に?」
その、突き放すような、今までの親しみに満ちた話しぶりから千歩も遠のいたような慎重な物言いに、美香は泣きたくなる気持ちを必死に押さえた。
「私は舞子を連れ戻しに来たの。」
「三年も経ってからか?」
ジーナは単純そうに見えるが、意外に疑り深い性格なのか、眉間にシワを刻んだまま尋ねた。美香はむきになって言った。
「おかしいのはそこよ!私は舞子が“子供のセカイ”に入ってから、そんなに時間が経たない内に後を追ったはずなのに、何で三年も経ってるの?」
この時間差だけが唯一の謎だった。支配者、というのは、舞子の特別な能力を考えれば納得できないことではなかったが、時間は違う。勝手に変えられるはずがない。
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