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戸を叩くのは…

[880]  齋藤 翼  2009-07-30投稿
 今年で高校二年に成った涼太は初めて一人暮らしを始めた。
「もう一時か…そろそろ寝よう」
そう思った時だ。
思い切り戸を叩く音がした。
「誰だ? こんな夜中に…多分友達だ。驚かそうとしているのだろう」
そう思い戸を開けると、そこには誰も居ない。
 後日、
「昨日俺んちに来た?」
と友達全員に聞いた。しかしNOの返事ばかり出る。
「何かのイタズラか…」
そう思い込んだ。しかしその日も、次の日も、戸を叩く音は鳴った。
 ある日、健一に相談した。
「一人暮らしを始めた時からなんだけど、夜中に誰かが思い切り戸を叩いてイタズラするんだ」
『毎日?』
「うん。明日朝早くから出掛けなければいけないんだけど、それが心配で…」
『確かに…』
「だから下で見張って居て欲しいんだけど…」
『お前何階に住んで居るんだ?』
「三階…」
『見張るって言ったって…無理だ。母さんに何て言えば良いんだよ』
「いやぁ…そのぉ…。何かおごるから上手い事言って来てくれない?」
『分かった分かった。行くよ。その代わり、絶対おごれよ!』
「了解」
健一は、見張る事に成った。
 その夜、健一が家に来た。
「ゴメンな健一…こんな夜中に」
『おごってもらえるから気にしてないよ』
「それじゃ頼んだぞ」
『何かあったら電話するからな』
「うん」
健一はアパートの下に行き、言われた通り見張った。
「これで安心して寝れる」
涼太が布団に入った途端、戸を叩く音が鳴った。
「たくっ!」
涼太は、すぐさま電話をかけた。
「おい! 見張っててって言っただろう!」
『見張って居るよちゃんと』
「えっ! だって今…」
電話を切り、玄関に向かった。
「逃がさねぇぞ」
涼太は、戸を叩く音が鳴って居るうちに戸を開けた。しかし誰も居ない。
「下に行ってみよう」
そう思い靴を履こうと下を見た瞬間、涼太は悲鳴をあげた。
悲鳴に気付き健一が上って来た。

 そこにあったのは、血まみれで長髪の子供の首だった。

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