MLS-001 014
月が
どこまでも
追いかけて来る。
疾走する黒い車の中。
花鼓は
マジックミラーになっている
後部座席の車窓から
こうこうと輝く月を
見ていた。
薄暗い沿道の
街並みを溶かした
藍色の窓ガラスに、
月だけが浮かび上がっている。
「私は反対したのよ。」
夏を目前にしながら、
大気は
深々と冷えていた。
「あんな乱暴しなくても
貴女なら
付いて来てくれるもの。」
花鼓は
月を見上げたまま
動かない。
花鼓と真龍。
二人の間、
わずか十数センチに
冷たい大気が
立ちはだかる。
真龍は、
言葉を選びかねて
口をつぐんだ。
月下の風景が
街から田畑になり、
田畑から森になった。
重なる木々が、
藍色のガラスの奥に
一層濃い闇を作り出した。
「私は、
何なんですか。
あなた方にとって。」
訊きたいことは沢山ある。
が、答えを信用出来ない者に
問う意味が
果たしてあるのだろうか。
「MLS-001って呼んでる。」
道路の向きが変わり、
月は窓枠の外へ
逃げていった。
花鼓と真龍の目があう。
「あなた、名前、何。」
「真龍。」
真龍は、
間をおいて付け加えた。
「みんな、そう呼んでる。」
こげ茶色の瞳が、
揺れていた。
ジャラジャラジャラジャラ
タイヤが
砂利を踏み分ける音がした。
「着いたぞ。」
車は、
山中に建つ
大きなプレハブの倉庫の前で
止まった。
どこまでも
追いかけて来る。
疾走する黒い車の中。
花鼓は
マジックミラーになっている
後部座席の車窓から
こうこうと輝く月を
見ていた。
薄暗い沿道の
街並みを溶かした
藍色の窓ガラスに、
月だけが浮かび上がっている。
「私は反対したのよ。」
夏を目前にしながら、
大気は
深々と冷えていた。
「あんな乱暴しなくても
貴女なら
付いて来てくれるもの。」
花鼓は
月を見上げたまま
動かない。
花鼓と真龍。
二人の間、
わずか十数センチに
冷たい大気が
立ちはだかる。
真龍は、
言葉を選びかねて
口をつぐんだ。
月下の風景が
街から田畑になり、
田畑から森になった。
重なる木々が、
藍色のガラスの奥に
一層濃い闇を作り出した。
「私は、
何なんですか。
あなた方にとって。」
訊きたいことは沢山ある。
が、答えを信用出来ない者に
問う意味が
果たしてあるのだろうか。
「MLS-001って呼んでる。」
道路の向きが変わり、
月は窓枠の外へ
逃げていった。
花鼓と真龍の目があう。
「あなた、名前、何。」
「真龍。」
真龍は、
間をおいて付け加えた。
「みんな、そう呼んでる。」
こげ茶色の瞳が、
揺れていた。
ジャラジャラジャラジャラ
タイヤが
砂利を踏み分ける音がした。
「着いたぞ。」
車は、
山中に建つ
大きなプレハブの倉庫の前で
止まった。
感想
- 24864: 翔:的確な描写…感服します。 [2011-01-16]
- 27223: 語彙力のなさにいつも悩まされているだけに、そう言って [2011-01-16]
- 27224: 頂けると、喜びも一塩です!遥花 [2011-01-16]
- 27226: 一塩×→一入○です。漢字の勉強にもなります(>_<;)遥花 [2011-01-16]
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