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ほんの小さな私事(59)

[342]  稲村コウ  2009-08-01投稿
本日、午後の授業も終わり、放課後、私は弓道場にやってきていた。
高野さんは写真部の部室へと行ってしまった為、途中で別れたのだが、彼女は後で、私が弓を引いているのを写真に撮りに来ると言っていたので、暫くした頃にこちらへとやってくるだろう。
また、職員室前で山崎さんに会ったのだか、守衛室でやる事があるからと、一人で練習などをしていてくれ、と言われたので、私は一人、鍵を持って、弓道場まで来ている。
鍵を開け、更衣室で弓道着に着替えると、まずは場内を一巡してみた。
朝見た通り、施設内は綺麗で、最近は誰も此処で活動していないという感じが漂っていた。
『やっぱり、私一人でここを使うのは勿体無い気がするわ。』
そうも思ってみたが、これほどにも立派な施設で稽古に励めるというのは、少なくとも、嬉しいと思っていた。
何はともあれ、道具ね。類いがしまわれている薄暗い倉庫に入り、的と矢を取り出してきて、的を広場にある壁へと設置した。
『暫く弓を射っていなかつあたから、感覚をまず取り戻さないと…。』
私はそう考えながら、一度目を閉じ、ふうっ、と深呼吸したあと、弓を構え、ゆっくりと弦を引いた。
張りつめた弦の感触を指先で感じつつ、一呼吸おいてから矢を放った。
ヒュッ!という音の後に、カッ!という音が辺りに響く。
矢は中心から少し横にずれた位置に命中していた。

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