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奇跡 4

[472]  木村蜜実  2009-08-02投稿
記憶喪失…。

1年前、達也は事故に遭い、頭を強く打ったみたいだ。

「記憶喪失だけど、家族の事は覚えているみたいなんだよね。」

「記憶喪失だから、別れたの?」

私は春香を睨んで叫んだ。

「家族の人に言われたのよ。仕方ないじゃない。」

少し涙目になっている春香をみて、私の胸がきつくしめられた感じがした。

「あかねには、早く伝えなきゃいけないと思ったわ…でも…。」

「でも…何?」

「申し訳ない気がして…。」

春香は言葉を詰まらせた…。

私に申し訳ないって…それは私からあの人をうばった事なのだろうか…。それとも…。

「達也は今何処に住んでるの?」

「今はこっちに戻ってきて、仕事復帰してるみたい…さすがにずっとやってきた会社は辞めてるけど…」

春香も私も、顔を見合わせる事はなかった…。

「もう帰るわ…そろそろ旦那も帰ってくる頃だし…。」

「あっ…うん…ありがとう今日…」

ニッコリ微笑んで、春香は私に名刺を渡してきた。

「あたしの番号。何かあったら電話して…。あまり役に立てないけど…。」

と言い、病室を出て行った。


記憶喪失か…。

春香は軽い症状みたいと言ってたけど、達也は、私の事も忘れてしまったんだろうか…。


達也に逢いたい………


忘れていた感情が一気に溢れ出した。

あの人に逢わない方がいいのだろうか……。

逢ってしまったら、混乱するのだろうか…。

逢いたい。

その事ばかりが、頭から離れない。

私はそのまま、眠りについた…。

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