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奇跡 5

[479]  木村蜜実  2009-08-02投稿
私は退院をして、今日から仕事復帰をする。
2週間ぶりに行く会社。
いつもの電車。
いつもの駅。
いつもの道。
仕事をする時の私に戻る。

達也への気持ちはまだ変わらないでいる。

あの人に逢いたい。


一日の仕事をこなしていれば、あの人の事は忘れられる…。

でも、同じ帰り道を通るとまた思い出す……。

人の心は不思議なもの……。

達也は今、どんな仕事をしているんだろう…。
達也は…私の事を…。

そんな事ばかり、この頃考えている。

街ゆく人の中を無意識のうちにさがす。

いるはずがないのに…。

ため息をついて、いつもの電車に乗る。

しばらくは、そんな毎日をすごしていた。


ある日、私の心を動かす出来事があった…。

「山口さん、親戚の方から電話だよ。」

「?」

私の親戚が職場の番号を知らないはずなのに…。

「はい…。」

疑問に思いながらも、電話に出る。

『山口あかねさんですか?』

女性の声で少し年配…かもしれない声…。

「はい、そうですが…。」

『私、井上達也の母ですが…今時間いいかしら…。』

「!」

達也の母親…なんで…?

「すみません…今はちょっと…6時に時間が空きますので、その後にでも…。」

私は携帯番号を教え合い、電話を切る。

胸がいつもより早い…。

達也ではなく、達也の母親に逢うなんて。

私はデスクの上に顔を伏せた。

頭の中はぐちゃぐちゃだった…。
仕事が手につかないくらいだった…。

不安が胸を押し潰す。

達也と別れた時と同じ気持ち。

何かあったのか…。

急ぎだったら、電話で用を言うだろうし…。

でも………。

達也の事で良くない事を話される気がした…。

悪い予感が私をおそう…。

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