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ポジティブ・アクション10

[599]  ミッシェル  2009-08-02投稿

「‥ふぅ、あんたがそんな辛い思いをしているとはな」

スティーブは懐から煙草を取り出し、火を付けた。

「もう耐えられない…でも‥行くしか、行くしかないの‥あの人の所へ‥」

涙でくしゃくしゃの顔を何度も手で拭いながら、彼女はひたすら泣いていた。

「何故」

「彼の下へ戻らないと、私は裏切り者と見なされて殺される‥」

「全く‥イカれた野郎だな」

スティーブは考え込むように、額に手を当てて俯いた。

「ごめん‥スティーブ‥車を出して‥帰るわ‥早く帰らないと」

するとスティーブは後部座席へと顔を向け、メアリーを見つめる。

そして、その震える手を優しく握りながら言った。

「メアリー、上手い事は言えないが、俺は何時だってお前の力になれる。俺の事をいくらでも頼っていいからな」

彼女はこの時、久しぶりに人の優しさに触れたと感じた。

そしてそれと同時に、胸に込み上げる熱い何かを感じていたのだった。

「ありがとう。凄く嬉しいわ」

すると、スティーブはダッシュボードの上に転がっているメモ帳とボールペンを取り、何やら書き始める。

そして、書いたページをちぎり、メアリーに手渡す。

「俺の住所と電話番号だ。俺に頼りたい時は何時でも来い。待ってるよ」

「ありがとう」

メアリーはその紙を綺麗に折り、ジーンズのポケットに仕舞った。

…その時

歩道からレストランの駐車場を見つめる怪しげな男がいた。

男は、車内のスティーブとメアリーの姿を見て驚愕する‥。

「あ、あれはボスの‥何てこった」

そう呟いた時、男の手は自然とズボンのポケットに伸びていた。

そしておもむろに携帯電話を取り出し‥
「ボ、ボス」

かけた先はボスのゲイリー。

ゲイリーはどうせ何時ものくだらない事だろうと思い、適当に答えた。

『はぁ、どうした』

男は駐車場の方を見つめながら

「ボスの女が、知らない男といます‥すぐそこで」

それを聞いたゲイリーは、知らぬ間に携帯を握る手を震わせていた。

「ホントか…?」

「あ、でもタクシーです」

「タクシーだと? ふっ、何時もの事だ。いや待てよ‥今頃は家に帰って来てる筈‥まさかその運転手と‥野郎…!!」

続く

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