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ポジティブ・アクション11

[566]  ミッシェル  2009-08-02投稿

「ボス、俺はどうすれば」

男は早口で言った。

「何もしなくて良い。只、その男の顔を覚えておけ。それだけで良い」

「わ、分かった」

ゲイリーはソファーに座り、両手で頭を抱えて俯く。

「メアリー‥」

ゲイリーはそう呟き、テーブルに置いてある酒の入ったコップを取る。

そして一気に酒を飲み干し、そのままコップを握り潰した。

コップは無残に砕け散り、破片があちこちに飛散する‥。




「ありがとう。じゃあまた」

「奴から逃げたくなったら、俺に言うんだな。俺が守ってやる。そしてお前を自由にしてやるよ」

メアリーはそれを聞いて、嬉しさのあまり笑った。

「うふふ。ホント良い人ね。あなたって」

「どう致しまして。それじゃ、またな」

メアリーはもっと彼と居たかったが、ゲイリーの逆鱗に触れる前に、足早に邸宅へと向かっていった。

…だが邸宅では、怒りを露わにしたゲイリーが待ちかまえている。

メアリーはそうとも知らずに、中へと入っていった。

「ふっ、お帰りメアリー。相変わらず美人だねェ」

まだ邸宅に残っていたゲイリーの部下が、リビングへと向かうメアリーに言う。
それに対し、メアリーは無愛想に答えた。

「…ただいま」

暗い表情を浮かべながら、メアリーはリビングへと足を踏み入れる。

そして、ソファーには何時ものようにゲイリーが座っていた‥。

ゲイリーは顔を上げ、口を開く。

「遅かったな…」

するとメアリーは、思い付いた言葉をすかさず口にした。

「今日は残業だったの」

それを聞いて、ゲイリーは勢い良くソファーから立ち上がる。

「嘘はつかない方が良いぞ。さっき、部下から電話があった。お前が、男と一緒にいるとな‥何でも、その男はタクシードライバーだとか」

ゲイリーは鋭い目つきでメアリーを睨みながら、ゆっくりと歩を進める‥。

そんな彼に、メアリーは必死に訴えた。

「ご、誤解しないで! 只の運転手よ!」

沢山の言葉を必死にゲイリーに言い続けるが、今のゲイリーに何を言っても無駄である。

ゲイリーはひたすらメアリーに近寄っていった。

メアリーは恐怖で体を震わせながら、ゆっくりと後退りする。

「覚悟しろ‥」

続く

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