ライオンの恋 その3
ケータイで検索した近在の小学校の中から、件の日付に友の元への遠足が決行されたところがないかホームページを調べる。
行事関連は保護者向けに掲示されていたりするものだ。
割と最近のことなのですぐに見つけられた。
「あったよ。緑小だって」
「いつ見ても不思議な道具だな。」
「そうかい?」
友と歩く。
緑小は現在授業中のようで外からは静かに見えた。
「さて、どうしようか。
迂闊に入ると不審者扱いでサスマタの餌食だし...」
そもそも超大型犬が校内を闊歩しては号泣する子供がでるやも知れぬ。
「では俺が隠れている間にあの子を友が呼び出すというのはどうだ?」
「それは良い考えだけど、名前も知らないのに呼び出すのは変じゃないかい?」
「名前なら知っているぞ。
子供たちが親しげに呼んでいたのを俺はきいた」
友もその名を呼んでみたいのではないかと思った。
「ごめんください」
小学校の職員室らしきところを訪ねた。
一階にある建築構造でよかったと思う。
「すみません、突然お邪魔してしまいまして。
しずか先生は今おいででしょうか」
応対に来た人にきく。
「え、しずかでしたら私ですが...」
「あ、そうでしたか。
突然すみません、はじめして。
実は友達があなたに一度お会いしたいと望んでいるのですが、あいにく人目を忍ばなければならない事情がありまして...。
あ、犯罪者とかってわけでは一切ありません。
ただ、慣れない人が会うと多少驚かれるかも知れませんが、会ってやってはいただけませんか?」
友がしずか先生に恋をしているなどとは匂わせてもいない、むしろ覚られまいと気を使ったつもりでいたが、なぜか華やかな用件だと察知したようで友に会うのを快諾してくれた。
しずか先生が話すには、実習期間が今日で終わり、既に受け持った生徒たちとの別れはすんでいて帰る仕度をしていたのだと言う。
ぎりぎり間に合ったのだ。
友はそれだけでも報われた。
さらに友が傷つかずに済むことを望むのは欲張りだろうか。
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