ポジティブ・アクション17
時計の針は午後の9時半を廻り、メアリーはしばし、スティーブの自宅で安息の時間を過ごす事にした。
メアリーはシャワーを浴び、タオルで髪を拭きながらスティーブの前へと姿を現した。
「さっぱりしたわ」
メアリーはそう言いながら、ソファに腰を下ろす。
「さて、明日からどうするかな。
奴に俺達の事がバレたんだろ? なら奴が黙っている筈はないよなァ」
スティーブは言いながら、冷蔵庫からビールを取り出し、コップを二つ、ソファの向かいのテーブルに置く。
そしてメアリーの隣りに座り、ビールをその二つのコップに注いだ。
「‥私達殺されるかも知れないわね。スティーブ、ホントにごめん…」
顔を俯かせるメアリー。
そんな彼女を見つめながらスティーブは言った。
「ふっ、落ち込むな。俺は何も気にしてないぜ。さっ、飲もう」
メアリーの肩をポンと叩き、スティーブはビールを喉に流し込む。
「ホント優しい人‥」
呟き、ビールを口にした。
メアリーはこの時、薄々気付き始めていた。
ゲイリーとは正反対な、寛容で寛大な心を持つ彼に、自分は知らぬ間に惹かれているのだと。
長らく、幸福とは無縁な日々を送ってきたメアリーだったが、今こうして彼といるととても安心し、久しぶりに幸せと感じたのだった。
「まさか奴らを敵に回す事になるとはな」
スティーブはそう呟き、ビールを一気に飲み干した。
「死にたくないわ」
不安げな表情を浮かべるメアリーに、スティーブは陽気に言う。
「ははっ。よぉし、今からお前は俺の“相棒”だ。俺から離れんなよ。死にたくないならな」
それを聞いて、メアリーはとても勇気が出た。
「ありがと。ふふっ。何があっても、離れないわ」
メアリーは微笑んだ。
「ははっ。よし、そろそろ寝るか。
メアリー、寝室で寝ていいぞ。俺はこのソファで寝るからよ」
「そう。わかったわ。お休み」
メアリーはリビングの電気を消して寝室に行き、スティーブはソファの上で目を閉じた。
…しかし、寝室に入ったメアリーの目に驚くべき物が飛び込んでくる。
「キャッ!! もう、今度は虎!?」
ベッドの横には大口を開けた虎の剥製が飾られていた。
続く
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