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「summer time」 No.3

[204]  アルパカ  2009-08-06投稿

自宅から見える海を眺めながら軽トラックを走らせる陽介。

ラジオの天気予報を聞きながらいつもの港へと向かう。

陽介は一年前に亡くなった父の後を継ぎ漁師をしている。

小さい頃から海のそばで育った陽介は海にたずさわる仕事がしたくてダイビングを始めた。

日本各地の海を転々とするうちに地元から離れてしまったのが4年前。

去年、父を病気で亡くしてから母がいる地元に戻り父の残した船に乗ることにした。

船が係留してある港に着いた時に陽介を呼ぶ声がした。

「おう。今日は久々にいい日になりそうやな。」

陽介の漁師仲間であり先輩の健二だ。

「ですね。でもここ何日か海も荒れてたし潮の流れも速いみたいやから、肝心の漁がどうなるか…。」

そう言いながらいつもよりうねりが残る海を眺める陽介。

「まぁ、とりあえず海に出て様子見てみっか。」

「はい。」

漁師と言っても今すぐに始められる仕事ではない。

子供の頃から馴染みのある船でも漁に関しては何の知識もない。

漁師を継ぐと決めてから1年、健二の元で漁師の基本となる仕事を勉強した。

仕掛けとなる網の編み方、魚群探知機から群れの位置を読み取り網を仕掛けるタイミング。

あくまで最低限の基本を学んだまでであって、すべては経験を積んで体で覚えていくものだ。

不安だらけだったが今年に入ってから初めて、父の残した船で漁に出た。

うまく行かないことだらけだが、今の陽介にはやりがいのある仕事でもある。

毎朝、漁に出る父の姿と今の自分がダブって感じるからだ。

船を繋ぐロープを外し、港から続々と船が漁場へと向かう。

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