子供のセカイ。47
(きっとジーナの慕っている王様をたぶらかしたっていう、あの女の人なんだ……。)
ついさっきの出来事。美香と一緒にいた王子を、ジーナの王の息子と勘違いして、号泣したジーナ。ついに王があの女に心を委ねてしまったのか、と、世も末と言いたげな悲しそうな辛そうな顔をして泣いていた。ジーナの心が我を忘れるほど怒りに駆られる相手。
サハールの女がミルトの王に迫っている、というのは、それにしてもおかしな話に思えた。事情はさっぱりわからないし、これ以上は聞くつもりもない。ただ、ここまでの話の内容はお世辞にも穏やかとは言えなかったにも関わらず、美香には一つだけわかったことがあった。
「ジーナは、自分の国と王様が大好きなのね。」
誰も何も言わなかった。と言っても二人だけしかいないのだが。空気までが息を呑み、太陽は静止し、泉は沈黙したように思えた。自分がひどく場違いなことを言ったのだ、とようやく美香は気づいて、耳がじんわり赤くなった。
「あ、わ、私っ…!」
「――ぷっ!」
ジーナが不意に吹き出した。それからぐいっと腕を引かれ、美香は背中からジーナに抱きつかれ、乱暴に頭を撫でられて髪をぐちゃぐちゃにされた。
ジーナは美香の顔の横で大きな笑い声を上げていた。
「あははははっ!お前、やっぱりいい子だな!殺さないで良かった!」
「は、ハァ…。」
やっぱり怖い人だ。そう頭の隅では思っているのに、気づいたら美香も高い声を立てて笑っていた。二人はわけもわからず、ハァハァと息を切らせながら、笑いの発作が治まるまでずっと笑い続けていた…。
それからしばらくして、王子が戻ってきた。
日は若干西に傾き始め、美香がずっと起きて看病をしてくれていたジーナに眠るよう勧め、一人で見張りをしていた時だった。
「あ、お帰りなさい。」
「……ただいま。」
疲れきった様子だった。あからさまに足取りが重いし、肩は下がっているし、何より表情がいつもより数段暗かった。王子は交代もなしに、いつからオアシスの周りの見張りをやらされていたのだろう?声をかけに行けばよかっただろうか、と思わず美香は後悔した。しかし、伸びたヤシの木陰に入ってきて、木の根元で横になっているジーナの背中を恨めしげに見つめた王子の様子に、美香は思わず笑ってしまった。
ついさっきの出来事。美香と一緒にいた王子を、ジーナの王の息子と勘違いして、号泣したジーナ。ついに王があの女に心を委ねてしまったのか、と、世も末と言いたげな悲しそうな辛そうな顔をして泣いていた。ジーナの心が我を忘れるほど怒りに駆られる相手。
サハールの女がミルトの王に迫っている、というのは、それにしてもおかしな話に思えた。事情はさっぱりわからないし、これ以上は聞くつもりもない。ただ、ここまでの話の内容はお世辞にも穏やかとは言えなかったにも関わらず、美香には一つだけわかったことがあった。
「ジーナは、自分の国と王様が大好きなのね。」
誰も何も言わなかった。と言っても二人だけしかいないのだが。空気までが息を呑み、太陽は静止し、泉は沈黙したように思えた。自分がひどく場違いなことを言ったのだ、とようやく美香は気づいて、耳がじんわり赤くなった。
「あ、わ、私っ…!」
「――ぷっ!」
ジーナが不意に吹き出した。それからぐいっと腕を引かれ、美香は背中からジーナに抱きつかれ、乱暴に頭を撫でられて髪をぐちゃぐちゃにされた。
ジーナは美香の顔の横で大きな笑い声を上げていた。
「あははははっ!お前、やっぱりいい子だな!殺さないで良かった!」
「は、ハァ…。」
やっぱり怖い人だ。そう頭の隅では思っているのに、気づいたら美香も高い声を立てて笑っていた。二人はわけもわからず、ハァハァと息を切らせながら、笑いの発作が治まるまでずっと笑い続けていた…。
それからしばらくして、王子が戻ってきた。
日は若干西に傾き始め、美香がずっと起きて看病をしてくれていたジーナに眠るよう勧め、一人で見張りをしていた時だった。
「あ、お帰りなさい。」
「……ただいま。」
疲れきった様子だった。あからさまに足取りが重いし、肩は下がっているし、何より表情がいつもより数段暗かった。王子は交代もなしに、いつからオアシスの周りの見張りをやらされていたのだろう?声をかけに行けばよかっただろうか、と思わず美香は後悔した。しかし、伸びたヤシの木陰に入ってきて、木の根元で横になっているジーナの背中を恨めしげに見つめた王子の様子に、美香は思わず笑ってしまった。
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