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ギャグ・クエスト8

[363]  雛祭パペ彦  2006-07-25投稿
「この地下126階に、魔王を倒すための強力なアイテムがあるはずだけど…」
 勇者が、攻略本を見ながら、ダンジョンの中を見渡す。

「おい、おまえら!」

 突然、暗闇の向こうから、ぶっきら棒な声が響いた。
「だ、誰?」
 勇者が、へっぴり腰で返事をする。
「よく来たな。オレは、伝説の道具屋だ」
 闇の奥から現れたのは、小太りのオッサンだった。
「伝説の道具屋?」
「そうだ。オレは、魔王決戦用アイテムを専門に扱う道具屋だ。偉いんだぞ!」
 なぜなのか、ものすごく威張っている。
「私たちは、魔王を倒すための旅をしている者です。ぜひ、そのアイテムを譲っていただけないでしょうか?」
 神官が、丁寧な言葉でお願いする。
「50万G、払え」
「えっ、お金を払うんですか?」
 普通、そういう重要なアイテムというのは、タダのはずである。
「当たり前じゃん」
 オッサンが、涼しい顔をして答える。
「…わかりました。払います」
 さいわい勇者たちには、多少の蓄えがあった。魔王を倒すためならば、仕方がない。
「よし。じゃあ早速、おまえらに伝説のアイテムを売ってやろう」
 50万Gを受け取ると、道具屋のオッサンは、奥から宝箱を運んできた。
「まず1つめ。プリペイド式の携帯電話だ」
「え?」
 意表をつかれた戦士が、思わず声をあげる。
「この携帯電話は、絶対に逆探知されない。そして、通話時間は無制限だ」
「はあ」
 勇者が、気のない返事をする
「2つめは、伝説の石板だ」
 やっと、それらしいものが出てきたので、勇者たちの期待は高まる。
「この石板に刻まれている数字は……魔王の自宅の電話番号だ」
 意味がわからない。
「そして3つめ。『世界のお経・24枚組・CD-BOXセット』だ」
 あきれた勇者たちは、地面に座りこみはじめた。家事手伝いの少女などは、iPodを聴いている。
「それって、もしかして…」
「そうだ。この3つを使って、365日24時間ぶっ続けで、魔王の家にイタズラ電話をするのだ。これで確実に、魔王の力は半減する」
「本当に?」
「間違いなく、魔王はノイローゼになり、不眠症に陥る」
 道具屋のオッサンは、自信に満ちあふれていた。
「元・ストーカーのオレが言うんだから間違いない。ひたすら『お経』を流しつづけるイタズラ電話が、いちばん効く。うまくいけば、自殺したりする」

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