奈央と出会えたから。<389>
そ、早退って☆
今、あたしにピースしたばっかじゃん?!
『何だ?!北岡、食べ過ぎか?!』
『ちげぇーよッッ!!残念。せーり痛でした。
おっイタタタッッ。
そういうワケで、俺、もう帰るわ。』
ガラッッ――
バタンッッ――
『こ、こらっっ!!北岡っっ!!
な、何を言ってるんだっっ!!
バカモノ!!』
聖人が教室を出て行った。
ザワザワザワザワ――
教室内が、またざわつく――
FM放送は、引き続き流れている――
館長さんのお話を聞いた後は、
パーソナリティ―のアヤカさんも、
相談者のミズホちゃんも、
落ち着いたようだった――
そして、
2-3の教室内の空気も、
それまでの緊迫した雰囲気が、
まるで嘘だったかの様に、
穏やかに、
ゆっくりと流れ始めた――
結局あたし、
何も分からなかったし。
聖人。
あたし、
何も分からなかったよ。
『渋川先生。あたしも早退します!!』
ケド、ひとつだけ分かったコト――
『何だ、木下まで?!どうした?!』
このトキのあたしを、
こんな、大胆な行動にさせたのは――
『あたしも生理痛ですっっ。』
きっと、あなたのせいなんだから――
『き、き、き、木下あぁぁ〜〜〜!!』
廊下を走っているトキ――
ちょっと気持ち良かった――
クラスメイト達の言葉なんて――
全然耳に入らなかった――
玄関を出たら――
目の前には、あなたがいて――
あなたの視界には、
胸がキュンと高鳴るあたしがいた――
それは、まるで、
あの日公園で、
偶然出会ったトキのシチュエーションだったよね――
『しゃーねぇな。』
その一言に、
すごく優しさを感じたよ。
差し出された、あなたの大きな手に、
あたしの手が重なる。
『親父のバイク、ホントは昼間は乗らね―コトにしてんだケド。
今日は特別だからな。』
『うん。』
『女の子乗せんのも――』
『/////』
オマエは特別だよって、
そう言われた様な気がした――
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