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ほんの小さな私事(69)

[353]  稲村コウ  2009-08-14投稿
大丈夫とは言ったものの、自力で起き上がる事ができなかったので、高野さんに手助けしてもらい、壁際まで移動し、壁に背をもたれて、暫く休む事にした。
「でも、何でそんなになるまで?」
そう聞いてきた高野さんだが、事に至るまでの説明をしても、理解してもらえないだろうと思い、私は少し、誤魔化して事を喋った。
「久しぶりに弓を引いた事で、夢中になりすぎたのでしょう。神経を集中し続けて、途中、気が抜けた途端に力が抜けてしまった様です。」
「そっかぁ…。そういう程度って事なら安心だけど、でも、無理はしちゃダメだよ。」
そう言ってくれる高野さんに、私は、「心配かけてごめんなさい。ありがとう。」と答えた。
「何はともあれ、私、水とか持ってくるね。」
高野さんは、そう言って、射撃場から出ていこうとしたが、ふと、何かを思い出したかの様に振り替えると、カメラを構え、私にピントを合わせた。
「どうかしました?」
と聞くと、高野さんは、夢中でシャッターをきりながら答えた。
「沙羅ちゃんの今のそのかっこ、なんか色っぽい。折角だから撮らないと損、損!」
「ええ?そんな…淫らになってしまっているのですか?」
私は自分の姿を何とか見てみる。すると、体勢を崩した際にはだけたのだろうか?道着の胸元が少し開いているのに気付いた。
私は恥ずかしさを覚え、何とか胸元を隠そうとしたが、まだうまく体が動かせず、身悶える事しかできなかった。
「沙羅ちゃん…それだともっと、エッチっぽくなっちゃってるよ…。」
漸くシャッターをきるのをやめた高野さんが、苦笑いしながらカメラをバッグにしまい、私のところに寄ってきて、はだけた道着を元に戻してくれた。
しかし私は、恥ずかしさが最高潮にまでいってしまい、思わず顔をうつむけてしまった。
「ごめんごめん、恥ずかしかった?でも、女の子同士だし、いいでしょ?あと、今撮った写真は、沙羅ちゃん以外には誰にも見せないから。ね。」
そう言いつつ、高野さんは、苦笑いのまま、射撃場から外に出ていってしまった。

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