時と空の唄 最終話
全てが終わって半年が過ぎた。
ここはニコラ。
季節は夏。
青い空には綿雲が浮かび淡い風がランスォールの横を通りすぎる。
あれからランスォールはラウフと共にキジルに戻り、情報屋として生活していた。
たまに、お小遣い稼ぎに他人の財布を拝借してはいたが。
雪もトーレの村に帰り、イツキと共に村の復興をはじめていると手紙が来ていた。
ランスォールは古い小屋の前に立った。
手には白い花束。
一度小屋を仰ぐとそのままランスォールは小高い丘を見上げた。
また風が通り過ぎる。
ザァァと木の葉のそよぐ音がして草は舞い上がる。
その時、ランスォールは目を見開いた。
「………っ!!」
花束を放り投げて地面を蹴った。
目は一点を見つめ、丘の上まで全力疾走する。
丘の上まで来た頃には息切れしていて声を上手く出せない。
「…っシーラ!!」
銀色の影が立ち止まり、振り向いた。
相変わらず長い銀髪を風に靡かせ、驚きの表情を浮かべこちらを見ている。
「ランスォール…?」
「バカ野郎っ!」
「え…っ」
シーラは今、自分に何が起きているのか分からずにランスォールの腕の中だ。
「終わって一晩経てばベッドはもぬけの殻、行方不明、音信不通、そのくせ何でこんなトコにいんだよ。」
「…ごめん。
私ね、海を渡ろうと思って。だからその前にお墓参りに。」
照れ臭そうに腕の中でシーラが笑う。
「…ホントはね、ここに来ればランスがいるんじゃないかって思ったの。
そして、本当にいた。」
「………よ。」
「ランス?」
「シーラはいつも勝手だよ。
いつも一人で決めて、一人でどっか行って。」
「……うん。」
二人は体を離し、ランスォールはビシッとシーラを指さす。
「だから!!
今度は俺も行く。
シーラに拒否権はないからそのつもりで。」
イタズラっぽく笑うランスォールにシーラは吹き出す。
「…………はいっ」
「そう言えばさ、ルメール神殿で刺された時何て言ってたんだ?
聞こえなかったんだ。」
途端にシーラは耳まで顔を赤くした。
「はぁっ…!?」
そんなこと、言える訳ない…
「なぁ、シーラ。」
「知らない知らない。
何にも言ってないっ」
こんなの二回も言えない。
「大好きだよ。」
「……ばか。」
ちゃんと聞いてたじゃない。
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