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子供のセカイ。50

[366]  アンヌ  2009-08-17投稿
それからの話は割りとスムーズに進んだ。
まず、ジーナが領域の出口まで案内してくれることになった。
「ラディスパークまでは行けない。王の命令が下っているからな。」
あくまで砂漠の管理を続けるつもりのジーナは、領域の出口で美香たちを見送ることになった。美香はジーナが一緒に来てくれれば心強いと思っていたので、ちょっとがっかりした。ジーナ自身も『知り合い』とやらを舞子に連れていかれているので、美香たちの旅に興味がないわけではない。だが王の命令は絶対なので、自分はここに残るとキッパリと言った。しかし、やはり悔しそうな顔をしていた。
それから美香たち三人は一晩をオアシスで過ごした。美香と王子は泉で久しぶりの水浴びをし、その夜は昼間寝ていたジーナが見張りに立って、二人はさっぱりした体でぐっすりと眠ることができた。次の日の早朝、三人はジーナの連れていた一頭の馬を伴ってオアシスを出発した。
領域の出口は東に二日行った場所のサボテン地帯にある。美香は断ったのだが、ジーナに無理やり馬に乗せられ、一人だけ楽をする羽目になった。最初の日はジーナ曰く予定通りに進めたらしい。砂漠の真ん中で携帯燃料を燃やして火を焚き、温度差の激しい砂漠特有の凍えるような夜をしのいだ。
美香の想像の力は至るところで役に立った。日中、肌を焼く太陽の光を防ぐために、ただの布切れからフードつきのマントを想像して、自分と王子を守った。ジーナのマントは一つしかなかったのだ。夜も三人分の厚い毛布を想像して、二人にかなり喜ばれた。美香はこの力はかなり重宝しなければいけない、と強く感じた。この先もっと必要になる。恐らく日常のことをこなすためではなく、戦うために。――舞子を止めるために。
しかし、次の日の昼頃。
ジーナの様子がおかしくなった。不穏な空気に、美香も王子も嫌な予感がした……。


「……ここからは一言もしゃべるな。」
低い声で言い放ったジーナは、明らかにピリピリしていた。フードからチラと見えた表情は鬼のように険しい。美香も王子も黙り、真っ直ぐ前だけを見るようにした。前方に見え始めた緑の塊が、徐々に一つずつ分解していき、それぞれ違う形をしたサボテンだとわかった。あと少しだ。それなのに、ジーナはなぜ緊張しているのだろう……。傾き始めた太陽を背にしながら、美香は首をかしげた。

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