復讐のジャケット?
俺はジャケットの懐に拳銃を忍ばせながら、バーの中へと入って行く…。
中では薄汚い男共が呑気に酒を飲んでいた。
席に座っている、ドレスを着た若い女達が誘惑の眼差しで見つめてくるが、今の俺には関係の無い事。
…俺の目的は1つ。
“奴”はカウンターの一番奥に座っていた。
長い髪に頬の傷。
間違い無い“奴”だ。
俺はゆっくりと“奴”の元へと歩を進める。
そして懐から拳銃を取り出し、
「久しぶりだな‥。“モーガン”」
モーガン・ディクソン…。
こいつが俺から全てを奪った男。
ありとあらゆる犯罪に手を染めた凶悪な殺人鬼である。
こいつは今まで大勢の罪の無い者を無差別に殺してきた。
そして妻と息子の命も…。
だが今、ようやく復讐が果たせる。
俺は強く拳銃を握り締めた。
「…うん? 貴様…アダムか?」
奴はそう言って、席から立ち上がった。
「そうだ! お前を殺しに来た!」
俺がそう叫ぶと席に座っていた客達が一斉に立ち上がり、悲鳴を上げながら一目散に店内から去っていった。
バーに残ったのは俺とモーガン。
…そして二人の男。
「ほぉ〜良いジャケットを着てるな」
奴は俺の拳銃には目もくれないで言った。
奴のそのムカつく態度が、俺の怒りを更に募らせる。
「アダム。そこにいる二人は俺の仲間だ。利口なお前になら分かるだろ? 今のお前の状況が」
背後から二人の男が俺に銃を向けているのが分かる。
だが、俺は別に命など惜しくない。
奴を殺せればそれでいいんだ。
俺に迷いは無い。
「死ね!!」
「何!?」
俺はそう叫び、引き金を引いた。
ありったけの銃弾を奴に浴びせる。
それと同時に背後からも衝撃がくるが、今の俺に痛みなど感じない。
俺は泣きながら、復讐の喜びに浸る。
やがて銃弾を撃ち尽くすと、俺は静かに倒れた。
血液が自分の体内から抜けていくのが分かる。
「馬鹿やろう…俺を舐めるなよ…」
奴の声が聞こえる…。
まだ聞こえる…。
まだ…。
…次の瞬間、俺のすぐ近くで何かが転がった。
それは死の淵に立つ俺でもハッキリと見えた。
…防弾チョッキだ。
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