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僕らのこと

[542]  武津ほずみ  2009-08-23投稿
汐の香りが桜に乗って舞う頃、僕は真新しい学ランに身を包んでこの「稲荷川」を渡った。
君を初めて見つけたこの川は、今も変わらず深い緑色に包まれている。


軽やかな足音たちの中、僕だけが重い足を引きずっていた。
誰もが憧れと一抹の不安と、そして希望を抱き新たな校門をくぐるこの日、僕には絶望しかなかった。

しばらく川を眺めていた。深い緑色に死んだ魚や腐った枝が浮かんでいて、でも桜の花びらが清めているようで何だか綺麗だった。
次の瞬間だった。3メートル先から、黒髪をなびかせてスキップをする姿が現れた。
衝撃だった。あまりにもその美しい容姿とはかけ離れた、幼稚な様に目を奪われた。何故だろう。僕はこの時天使だと思った。この僕の絶望を拭いに来たのだと。
目が合いそうで合わない。君は当然僕には気づかないまま、川を渡り校門をくぐった。
初めて感じる女の子の残り香に立ち止まった後、僕も少し軽やかに校門をくぐった。絶望とほんの少しの期待を胸に秘めて。


感想

  • 18884: 綺麗な話しです。表現が上手くて憧れます♪沙愛 [2011-01-16]

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