携帯小説!(PC版)

鈍感

[666]  阿部和義  2009-08-23投稿
「アンタ、鈍感すぎ」


 俗に言う出来ちゃった結婚と、出産を済ませた直後に単身赴任になった僕を、君は何年経っても罵り最後に決まってこう言う。


 確かに僕は鈍感だったに違いない。
 悪い結婚を見抜けずに深みにはまっているのだから。

 でも君は鈍い男が好みなんだろう。
 四十歳近いのに恐ろしくサバを読み、絵文字をびっしり使ってさ。
 その相手もさぞかし「鈍感」なんだろうな。
 可笑しくなってくるよ。


 でも僕は君のような女性はタイプではない。
 能動的に食事をし、満腹になったら横になる。
 ほったらかしの庭に、手付かずのガーデニング用品を見た時は本当に苛立ったよ。

 愛していた頃の君が懐かしいよ。
 とてもとても。
 君も愛していないんだろう、きっと。
 もう終わりにしないか。


 似たもの夫婦とはよく言ったものだ。
 僕と君は似ているらしい、皮肉にも。

 僕も君も鈍感なんだよ。
 僕が横に立っているのに気付かないのが何よりの証拠だよ。


 でも、なによりも君が一番気付くべきだったのは、僕がスコップを新調して土を買い足した事。


 さあ、終わりにしよう。

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