携帯小説!(PC版)

平気

[644]  阿部和義  2009-08-23投稿
「マンションじゃなくも平気よ。アパートでいいわ」
 同棲する事になったとき、そう彼女は言った。愛があればいいの、とほほえむ彼女を見て、俺は嬉しくなったものだ。

 倹約家の彼女はとどまる事を知らなかった。
「携帯がなくても平気よね。公衆電話があるもの」
「テレビがなくても平気よね。ラジオがあるもの」
「車がなくても平気よね。電車があるもの」
 かくして俺は、このハイテクの時代に昭和の生活を強いられている。それもこれも俺への愛だと思っているから始末に悪い。

 俺は我慢が出来ず、別の女をつくり夜の街で遊ぶようになっていった。
 ある晩帰宅した俺をいきなり彼女は罵倒した。浮気がばれたのだけれど、俺も開き直った。
「お前なんかいなくたって平気さ。ほかの女がいるからな!」
 彼女は青くなった。
 ざまあみろ。お前がいつも言っているセリフだ。

 彼女が泣きながら、台所で何かやりだした。後ろから覗き込むと、彼女は血まみれになって自分の手首を切っている。
「うわっ!」
 彼女が振り返りざま、俺の胸に包丁を突き立てた。
「現世で結ばれなくても平気よ。来世があるもの」

感想

  • 19121: すごい。の一言が全てを表します。言いようがないです:ゅゅ [2011-01-16]
  • 19139: 怖い(οдО;)怖いです!沙愛 [2011-01-16]
  • 21644: 良いんじゃない [2011-01-16]

「 阿部和義 」の携帯小説

ミステリの新着携帯小説

サーバ維持用カンパお願いします。
WebMoney ぷちカンパ

Twitterで管理人をフォローする

利用規約 - サイトマップ - 運営団体
© TagajoTown 管理人のメールアドレス