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◆呪い師◇

[799]  さち  2005-11-23投稿
◆呪い師…古の人々は強力な呪いの力を操り収入を得ていた者達のことをこのように呼んだ。呪い師の力は病を直したり政治に使用された。呪い師を神のように崇拝した人もいれば邪悪な妖かしを見るように恐れた人もいた。そしていつの日か呪い師は抹殺されはじめる…政府が呪い師を恐れ抹殺するよう国民に命じたからだ。この命令がきっかけで人々の呪い師への恐れ憎しみがかきたてられ呪い師はこの世から消えていった。 ◆時は華の江戸時代。江戸の下町にある古い長屋に一人の青年が住んでいた。青年の名前は律(りつ)。律は絵師の仕事を手伝いながら生活している。決して安定した豊かな生活ではないが元々絵が好きだった律は今の生活に満足していた。律は布団をたたみ顔を洗うと朝日が輝く外に出てみる。「うんっ!今日も良い天気になりそうだな。美しい空だ…」律は深い緑色の目で生き生きとした朝日の光が広がる空を眩しそうに見つめながら呟く。空を見つめる律の少し栗色がかった髪の毛が朝日に照らされ輝く。 ◆律は呪い師の血をひいている。幼い頃から「呪い師の血をひいていることは誰にも言ってはならない」と父と母に言われてきた。政府からの「呪い師抹殺命令」は未だに消されていない。律達は呪い師の血をひいていることを隠しつづけた。しかし律達が呪い師であるということが人々に知られることもあり、その度に律達は各地を転々とした。殺されかけたこともあった。血をはくような思いで熱さや寒さから身を守ったこともあった。 ◆今まで律は死と隣合わせで生きてきた。顔を洗い、布団をたたみ、朝日の光が広がる空を見つめる…ごく普通の当たり前なこの江戸での瞬間が律にはとてつもなく穏やかで幸せな時間だった。

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