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キャッチボール 第42話

[330]  るー6  2009-08-31投稿
陽太は行ってしまった。

みんな意地悪だ…。
「オレ…」
待ち合わせの時間まで、あと15分。
龍吾は諦めなかった。みーくんと話をする。そう決めた。
期待と不安が交錯する。

午前8時。約束の時間。
ついに来た。この時が。
前方からみーくんがやってきた。
「…おはよう。」
龍吾はなんとか声を出す。「…おはよう」
しばらく沈黙が続いた。
「昨日はどうだ?よく寝られた?」
「そんなことはどうでもいいんだ。」
「……」
「でも、龍吾の気持ちは分かった。謝りたい。という気持ちが伝わってきたよ。」
「うん…」
すると、みーくんはグローブを取り出した。
「キャッチボールしてくれて、ありがとう。友達になってくれてありがとう。でも龍吾には、もっと楽しめる友達がいるはず。龍吾は、こんな病人と一緒にいないほうがいいと思う。」
みーくんの顔は、悲しみに満ちていた。
「…そんなんでみーくん幸せなのかよ。」
「…」
「幸せじゃないんだろ!」「僕は。」
「何だよ。」
「龍吾に苦労…させたくないだけ。」
龍吾は下を向く。
「僕は決心したんだよ。」そしてみーくんが近づいてきた。
「今までありがとう。これからもお姉さんと仲良く暮らしてね。」
僕は龍吾にもらったグローブを渡し、
「ありがとう。」
これが最後。このキャンプで別れ。
僕はそう決めつけていた。帰りの車内…皆一言も口を聞かず、無言の状態が続いた。
龍吾の家では、
「姉ちゃん…」
「聞いてたよ。あの朝の話。」
龍吾は力なく反応した。
「これからは、岬くんのことは忘れて、また新しい友達、見つければ…」
「そんなことできねぇよ!」
龍吾は頭を抱える。
「オレはみーくんを守っていきたいと思っていた。親友だと思っていた。でもその友情を傷つけたのはオレのせいだ…。」
「龍吾…」
姉ちゃんは龍吾の決意に胸を打たれたのか、そっと一言。龍吾に言った。
「龍吾はね。責任感が強いから、きっと、岬くんを守れることができるよ。これからもずっと…」
龍吾に語りかけると姉ちゃんは龍吾の頭を撫でた。
「まだチャンスはある。岬くんもきっと…龍吾のもとへ来るよ。」
姉ちゃんは励ますので精一杯だった。

僕はもちろん…落ち込んでいない訳がなかった。
お母さんに話しかけられても、
「話しかけないで。」
切なく言うだけだった。
絶交の日。もう龍吾のことは忘れる。

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