あなたがいるだけで。
あの人と初めて出会ったのは、忘れもしない…桜が満開で花びらがひらひらと舞っていた、高校の入学式。
あの人は穏やかな表情で花びら舞い散る青空を見上げていた。
「優!」
親友の花に名前を呼ばれてふと我に返る。
「なに?」
「なにボーッとしてるの?」
「ああ…なんか桜見てたら入学式のこと思い出してた」
「入学式かぁ…はやいねぇ もう今年卒業だもんね」
花の言葉に苦笑いする。
そうなのだ この丸二年間何もできずに、ただあの人を見て過ごしてきた。
「優は最後の絵何にする?」
「まだ決めてないけど…」
真っ白い大きなキャンバスを前にして花が聞いてきた。3年の私たちに課せられた最後の課題。夏、美術部を引退するまでにひとつの作品を完成させる。高校生活最後の作品。
「また明日考えよっ」
二人で美術室を後にして教室へ戻る。
廊下を歩いていると向こうから、誰か歩いてくる。
黒髪の短髪、少し小柄で…ゆっくりと歩く。
シルエットだけでも分かる。
いつも、見てたから。
「あ!大嶋くん!部活おわり?」
花が気さくに声を掛ける。
「はい。山田さんも?」
「も〜いい加減敬語やめてよね!タメなんだから。同中の仲じゃない」
苦笑いする大嶋くん。
花が羨ましい… 私は大嶋くんと何のつながりもない。かと言って声を掛ける勇気もない。ましてや告白なんか考えただけで倒れそう。その結果2年間ムダにした。
今年で高校生活もおわり。今年こそは勇気を出さなくちゃって、思ってる。勇気を…。勇気…。勇気を…。
「あっ…の」
勇気を出して声を出した瞬間、
「この子、友達の廣瀬優。同じ美術部なの」
花が私にニコッと笑いかけ、私のことを大嶋くんに紹介してくれた。
「…知ってますよ。廣瀬さん、目立ちますから」「えっ…」
一瞬息が止まりそうになった。私のこと、知ってる。
「いつも美術展で入賞してますよね?よく表彰されるから」
顔が火照ってるのが分かる。熱くて、クラクラしそうだ。
「あ ありがとうございます…」
やっと出たのがこのセリフ… 訳分からない。
「じゃあ、また」
「またね!大嶋くん」
花が明るく大嶋くんに手を振る。
まだ頭がクラクラする…。私はあいさつも忘れ、その場に立ち尽くしていた。
続く。
あの人は穏やかな表情で花びら舞い散る青空を見上げていた。
「優!」
親友の花に名前を呼ばれてふと我に返る。
「なに?」
「なにボーッとしてるの?」
「ああ…なんか桜見てたら入学式のこと思い出してた」
「入学式かぁ…はやいねぇ もう今年卒業だもんね」
花の言葉に苦笑いする。
そうなのだ この丸二年間何もできずに、ただあの人を見て過ごしてきた。
「優は最後の絵何にする?」
「まだ決めてないけど…」
真っ白い大きなキャンバスを前にして花が聞いてきた。3年の私たちに課せられた最後の課題。夏、美術部を引退するまでにひとつの作品を完成させる。高校生活最後の作品。
「また明日考えよっ」
二人で美術室を後にして教室へ戻る。
廊下を歩いていると向こうから、誰か歩いてくる。
黒髪の短髪、少し小柄で…ゆっくりと歩く。
シルエットだけでも分かる。
いつも、見てたから。
「あ!大嶋くん!部活おわり?」
花が気さくに声を掛ける。
「はい。山田さんも?」
「も〜いい加減敬語やめてよね!タメなんだから。同中の仲じゃない」
苦笑いする大嶋くん。
花が羨ましい… 私は大嶋くんと何のつながりもない。かと言って声を掛ける勇気もない。ましてや告白なんか考えただけで倒れそう。その結果2年間ムダにした。
今年で高校生活もおわり。今年こそは勇気を出さなくちゃって、思ってる。勇気を…。勇気…。勇気を…。
「あっ…の」
勇気を出して声を出した瞬間、
「この子、友達の廣瀬優。同じ美術部なの」
花が私にニコッと笑いかけ、私のことを大嶋くんに紹介してくれた。
「…知ってますよ。廣瀬さん、目立ちますから」「えっ…」
一瞬息が止まりそうになった。私のこと、知ってる。
「いつも美術展で入賞してますよね?よく表彰されるから」
顔が火照ってるのが分かる。熱くて、クラクラしそうだ。
「あ ありがとうございます…」
やっと出たのがこのセリフ… 訳分からない。
「じゃあ、また」
「またね!大嶋くん」
花が明るく大嶋くんに手を振る。
まだ頭がクラクラする…。私はあいさつも忘れ、その場に立ち尽くしていた。
続く。
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