子供のセカイ。57
振り返ると、王子が尻餅をついた所だった。見れば王子の前に立っているのは、筋肉の盛り上がった大柄な男で、巨大な斧をつかんでいる。どうやら王子の細い剣では斧の衝撃を受けきれず、受け流した際に倒れてしまったらしい。男は上半身裸で、見事な太鼓腹をつき出して愉快そうに笑っていた。こめかみの髪を刈り込んで、伸ばした後ろ髪をみつあみにした不思議なヘアスタイルをしていた。
「がははははっ!こんなひ弱そうなのが俺様の相手とはな!五秒と保ちそうにない……。」
そして男は、緩慢な動作で斧をのろのろと振り上げながらカウントダウンを始める。
「いーち、」
王子は慌てて立ち上がろうとするが、足を男に踏まれて動きを封じられた。
「にーい、」
放せ!とわめきながら男の足に斬りつけるが、硬い防具に少し傷をつけただけだった。
「さーん、」
今度は男の腹に向かって剣を突き出すが、すんでの所で男に腕をつかまれて阻止された。腕の骨が軋んで王子は悲鳴を上げた。
男は急に間抜け面になって首を傾げた。
「ん?さん、の次はなんだっけか…?」
王子の顔が青ざめた。絶対に絶対に。こんな、数の数え方もわからないような奴にだけは殺されたくない!王子は、空いた方の手で力いっぱい男の出っ張った腹を殴りつけた。これは少しは効いたらしく、男は豚によく似た顔をさらに醜く歪める。
「痛てえなガキ!……おっ、そうだ。さんの次、思い出したぞ!」
男は先ほどまでとは打って変わって、空気を切り裂かん勢いで、ブン、と空高く斧を振り上げた。
獅子が立ち上がったようなその姿を、王子は恐怖に染まった目で見上げる。男はにたりと笑った。
「さん、の次は……五だ!!」
巨大な斧が軽々と振るわれ、重い唸りを上げて王子の脳天めがけて降り下ろされた……。
「……ぅあああっ!!」
少女特有の高い声が空気を貫く。同時にドシン、と地響きがしたかと思うと、王子と大男二人の上にサッと影が落ち、天が落下してきたような圧迫感が頭上を覆った。
生き物としての生存本能が二人を恐怖に駆らせた。男はピタリと斧を止め、王子は目を見開いてゆっくりと上を見上げる。
何が起こったのかもわからない内に、巨体を誇るはずの大男が横向きに吹っ飛ばされた。
「んぎゃっ!」
断末魔のような恐ろしい悲鳴が、一拍後に耳に届き、王子は縮み上がった。
「がははははっ!こんなひ弱そうなのが俺様の相手とはな!五秒と保ちそうにない……。」
そして男は、緩慢な動作で斧をのろのろと振り上げながらカウントダウンを始める。
「いーち、」
王子は慌てて立ち上がろうとするが、足を男に踏まれて動きを封じられた。
「にーい、」
放せ!とわめきながら男の足に斬りつけるが、硬い防具に少し傷をつけただけだった。
「さーん、」
今度は男の腹に向かって剣を突き出すが、すんでの所で男に腕をつかまれて阻止された。腕の骨が軋んで王子は悲鳴を上げた。
男は急に間抜け面になって首を傾げた。
「ん?さん、の次はなんだっけか…?」
王子の顔が青ざめた。絶対に絶対に。こんな、数の数え方もわからないような奴にだけは殺されたくない!王子は、空いた方の手で力いっぱい男の出っ張った腹を殴りつけた。これは少しは効いたらしく、男は豚によく似た顔をさらに醜く歪める。
「痛てえなガキ!……おっ、そうだ。さんの次、思い出したぞ!」
男は先ほどまでとは打って変わって、空気を切り裂かん勢いで、ブン、と空高く斧を振り上げた。
獅子が立ち上がったようなその姿を、王子は恐怖に染まった目で見上げる。男はにたりと笑った。
「さん、の次は……五だ!!」
巨大な斧が軽々と振るわれ、重い唸りを上げて王子の脳天めがけて降り下ろされた……。
「……ぅあああっ!!」
少女特有の高い声が空気を貫く。同時にドシン、と地響きがしたかと思うと、王子と大男二人の上にサッと影が落ち、天が落下してきたような圧迫感が頭上を覆った。
生き物としての生存本能が二人を恐怖に駆らせた。男はピタリと斧を止め、王子は目を見開いてゆっくりと上を見上げる。
何が起こったのかもわからない内に、巨体を誇るはずの大男が横向きに吹っ飛ばされた。
「んぎゃっ!」
断末魔のような恐ろしい悲鳴が、一拍後に耳に届き、王子は縮み上がった。
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