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アロエ

[293]  サン  2009-09-03投稿
標高が高い冬山に二人の男が絶壁の氷壁に挑んでいた。

天候が思わしくない中のトライだった。

上にいる男が合図を送ると、ザイルに繋がれた男が固い氷にピックをかけながら登っていく。

命は杭に通された登山用の綱のみだ。二人の呼吸が重なる。

下にいた男が足を掛けそこねた。上にいる男の手に握られたザイルが擦るように引っ張られる。

「エイ!!」

ザイルの動きが止まった。必死にこの命を失うまいと、強く男の手に握られていた。

「コータ、」
下から呻くような声が聞こえる。
その声を聞き、雷華光太郎(ライカコウタロウ)は安堵の息を吐いた。

ザイルの横揺れが徐々におさまっていく。

エイと呼ばれた男はピックで全体重を支えていた。
間宮榮(マミヤサカエ)は思わず腹の辺りを触った。
あった。
小さい瓶に入れられた、白い灰。
それは、俺達二人が愛した女の遺骨の一部を灰にしたものがはいっていた。
「ミミ、あと少しで星になれるぞ。」
榮は話しかけた。

ミミ、唯一無二の存在だった。出逢った瞬間に運命を感じた。

病を抱えながらも生き切った彼女、川合美弥香(カワイミミカ)の話をしよう。

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