もしも明日が
朝特有の眩しい日差しに目を覚ました彼は枕元に設置された目覚まし時計を見た。
午前8時20分
しばらくぼぅとそれを見ていた彼だったが何かに気付き絶叫をあげたのはそれから間もなくの事だった。
「やばいやばいやばいやばいっ…!」
急いで着替え荷物を引ったくるようにして鍵も掛けずにアパートを飛び出した。
彼――手塚 火葉<このは>は異能力者取締局通称『IC』に所属する異能力者だ。
「ったく初日から寝坊かよっ…」
柳市の管轄に回された火葉はこの日、ある高校の転校生として赴任することになっていたのだ。
秋津高校
そう書かれた門を軽く飛び越え校内に侵入する。
「…っと職員室は、っと」
シャラン…
キョロキョロと職員室を探していた火葉の耳に鈴の音が届く。
振り向いてみると鈴の音の発信源は木の上にいた。
緑の間で藍色の長い髪を風に靡かせる『彼女』は微笑んでいた。
「お探し物?」
「あ…の、職員室、どこだかわかりますか?」
「ええ。わかるわ。」
彼女が答えると、彼女の長い髪を結わえている大きな赤いリボンの先についた鈴がまた鳴った。
「あっちよ。」
「あ…ありがと!」
火葉の腕時計は既に8時40分を指している。
10分の遅刻にぎょっとなりながら慌ただしく彼女の指す方へと駆けていった。
残されたのは『彼女』一人。
駆けていく少年の背に楽しそうに目を細めている。
「ふぅん…
彼が、例の転校生、確か手塚火葉…とか言ったかしら?」
楽しくなりそうね、と言いながら木の上から飛び降りた。
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