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祝福のステージ 1

[114]  キャビン  2009-09-06投稿
 今真っ昼間の野外に一人の男がステージに立ち、歌っている。真ん中で棒立ちになり必死に叫んでいる。周りのメンバーから一際目立とうとしている。何か心の中にかげを抱えながら、何かを振り払おうと必死だ。そしてその姿を満員の観客が熱狂的に支える。だがその一人一人にも彼の心のかげは感覚として感じられている。
わずか三ヶ月前彼は一人の女と一緒だった。女は一つ下の大学時代からの友達。暫らくの間彼らはお互いを良い友達として見ていた。メジャーデビューした頃から女の方からの誘いで付き合い始めた。彼は人気が出てくるにつれ多くの金が手に入った。その大半を彼女へのプレゼントに使った。時が過ぎていくにつれて女にのめり込んだ。やがて女は音楽以上になった。女は彼のすべてになった。女は感情を表に出さないので彼にはあまり気持ちが理解できなかった。それでも愛することにすべてをかけた。
 しかし三ヶ月前、一緒に暮らしていたマンションから急に女が消えた。声もかけず、置き手紙もなく、一人で出ていった。必死になって探したがまったく見つからなかった。それでも女への気持ちが捨てきれず落ち込んでいた。
 そして今、久しぶりのライブ。ファンの前では明るく振る舞おうとしている。しかし誰の目にも彼の空元気のような振る舞いは感じ取られた。もう秋も終わり頃だというのにTシャツ一枚で汗まみれになっている。もはや狂気に近かった。
 ライブも終盤だ。彼のMCが入る。
 「今まで聴いてくれてありがとう。今日は本当に楽しかったよ。こんな気持ちになったのは初めてだ。次の曲がラスト!」
 観客は彼の顔をじっと見つめている。
 「最後の曲は今、どこかで聴いているかもしれない愛する人に歌う曲だよ。」 『最後の愛』
  今日もまた身をけずり
  働いた俺を迎えてくれる
  あの人はどこへ行った
  あなたのやさしい瞳の中に
  たった一人の俺を見つけて
  幸せな日々は永遠だと思った
  今日もまた足をとめて
  愛を歌う幻影を追っている
 ここまで歌って涙で何も言えなくなった。もうここですべてを語って誰かに彼女を探してほしい。こんなつらい思いはもうしたくない。バンドのメンバー、観客、スタッフ、彼の周りを取り巻く全ての人が不安を感じている……

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