もしも明日が1-2
ドアの向こうが騒がしい。
時期外れの転校生に興奮しているのだろう。
名前が呼ばれ、中に入る。
すぐにシンと静まり返り火葉に視線が注がれた。
その中に少し奇妙な視線を感じてそれを探ってみる。
周りとは明らかに違う、怒っているような、憎しみを帯びたような視線。
しかしその主の特定には至らず自己紹介をするよう担任に促される。
「…手塚火葉です。
宜しくお願いします。」
使い古した営業スマイルを顔に貼りつけ決まり文句を言う。
パチパチと小さな拍手に歓迎された。
一つポツンと空けられていた一番後ろ一番端の席に着き教室を見回す。
すると右斜め前の席が空いているのに気が付いた。
休みだろうかと思っていると担任が出席を取り始めた。
「高橋ー」
「はい」
「辻ー」
「へーい」
「籐阪ー」
返事がない。
「籐阪ー…はまたあれか。」
一人納得してまた出席をとっていく担任。
欠席か、サボりか、或いは何らかの仕事を任されているのか。
どれにしたって自分には関係ないと思い、火葉はそのまま机に突っ伏した。
あれから午前中の授業を受け、休み時間には例によって質問の嵐。
ヘトヘトになりながらそれに受け答えをし、昼休みはどうにか抜け出して今、火葉は二階の渡り廊下にいる。
これからの『仕事』の為に校内を把握しておかなくてはならない。
一通り見て回った頃、ポケットに振動を感じた。
携帯を確認するとメールが一通。
送り主は『IC』の上司、佐倉だ。
『秋津高校に違法異能力者の存在を確認。
近日中に捕獲せよ。』
用件だけの簡素なメール。
いつものことなのだがもう少し気の利いた文には出来ないだろうかと思う。
しかしあの仏頂面で寡黙な佐倉が絵文字やら顔文字を送ってくると思うと背筋に寒気を感じる。
やっぱりこのままでいいと首を降り、火葉は携帯を閉じた。
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