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いなか日記1

[182]  うめこ  2009-09-11投稿
 とある田舎に住んでいる家族の話。

 次女ほんわかこはある休日に山へ散歩に出かけていった。空がよく晴れて気持ちのよい天気だったので、散歩ついでにご近所様と親睦を深めようと家を出た。今まで彼女はご近所様と話をしようと考えたことがなかったが、近くに住んでいるのに仲良くしないのは変だと思ったのだった。
 わかこが山を歩いていると、畑で一人のおばあさんに出会った。
「こんにちは。何をしてるんですか?」
「栗を拾っとったんだよ。ほれ。」
わかこはよね子ばあさんの栗を見てみると、籠の中には卵くらい大きな栗がごろごろあった。
「これはね、利平っちゅう栗でね、他のは売りに全部採っちまったけど、これは遅成りであと十日にならんと採れんのやて。」
そう言いながらよね子ばあさんは籠の中から袋を取出して、
「お前さん、これやるわ。うちはいっぱいあるで食べやあね。これは知っとるか?蛙メロンっちゅってね、切って冷やして食べるんやよ。」
と言った。そして栗と蛙メロンをわかこにあげた。蛙メロンは手のひらほどの大きさで、白い瓜に、緑の斑点が全体的にかかっていた。それははじめはおいしそうに見えたが、わかこは蛙メロンと聞くと気持ち悪く見えてしまった。
 しばらくわかこはよね子ばあさんと山道を歩いた。よね子ばあさんは山道の南側を指して、
「ここあんたんとこの本屋の土地やろ?」
「そうなんですか?知らなかったです。」
「うん、ここはそうやわ。それからあっちも。」
と、車道の向こう側も指した。こっちの土地もあっちの土地も草や葛の木でいっぱいだった。
「よーけ土地があるで、ここまで手が届かんのやわね。ほれ、頻尿の子はこれの根っこをきざんで煎じて飲ませるといいんだよ。」
わかこはよね子ばあさんに野菜や植物について教えてもらい、感嘆した。
(こんなこと、今まで知らなかったわ。おばあさんて、やっぱりすごいわ。)
やがてわかこは思わぬ手土産を手によね子ばあさんに別れを告げた。
「あぁ、そうかそうか。よぅ来てくださった。ありがとありがと。」
とよね子ばあさんは言った。
 わかこはこの日、ご近所様と仲良くしようと散歩に出かけて、思いがけない収穫があって驚いていた。
(おじいさんおばあさんと仲良くなるのは素晴らしいことなんだわ。)

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