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君からの手紙〜63〜

[403]  YOSI  2009-09-11投稿
(女)「全てが…全てが明かされつつありますね」
(男)「ええ…」
(女)「でも、怖い部分もあります。全てが終わったら…佐野さんと中村さん以外は、どうなるんだろうって…なんか不安です…」
(男)「そうですね。もしかしたら…別れも、あるかもしれません…でも、みんな覚悟を決めたようですね。どんな未来が待っていたとしても…」
(女)「…『秀さん』が、わかって、彼が歌うこと…私、彼がつらい思いを抱いていたこと…すごく複雑です」
(男)「ええ…でもつらい思いをしたまま生きてゆくより、また新たな気持ちで生きてゆく方がいいんじゃないかな」
(女)「…でも、そこには、つらい思いもありますよね?きっと」
(男)「かもしれません。でも…15年もの間、1つの曲をめぐって、つらいことがあった…それだけは、晴れるんじゃないかな…」
そう言った男の顔は、今までになく、何か覚悟を決めたような顔をしていた。 勇一達が、覚悟を決めたように、男自身も、女に本当に伝えなければならないことを、伝えようとする…そんな表情だった。
だが女は、あえて、そのことを聞くのを止めた。
…なぜ、なぜだろうか?…きっと伝えたことによって、全てがわかることによって、この場から立ち去ることになる…この人と離れてしまうことになる…最初は、さまよっていた自分を知れれば良かったのに…
覚悟を決めるってつらい。
全てを知ることは、つらいこともあるんだ。
いつの間にか、女は、男を、大切な存在と思うようになっていた。
(女)「1つ聞いていいですか?」
(男)「はい」
(女)「全てが、わかって…私が誰かわかって…そしたら、私は、この場から立ち去ることになると思います。…でも、違う考えの自分もいます」
(男)「違う考え?どんなことです?」
(女)「この場から離れたくない自分です」
女は、いつからか、そんな風に思っていた。
いや、なんとなく目の前にいる、この男が、ぼんやりと誰だかわかりかけたからだ。
…そして、自分自身も。
しばしの沈黙の後、女は切り出した。「続きを見ましょうか」
男は、黙って頷いた。

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