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子供のセカイ。63

[357]  アンヌ  2009-09-14投稿
「……ハハッ!ハハハ……。」
乾いた笑い声が、誰もいなくなった空き地に響いた。――否、誰もいないのではない。生存者のいなくなった空き地に、だ。
ジーナは空き地の真ん中で、たった一人で立っていた。剣はすでに腰の鞘に納められている。ふと視線を落とすと、自分を見上げている落ちくぼんだ目と目が合った。
見開かれた目、その中心の瞳孔の開いた黒い瞳。ジーナと同じ、この地域特有の真っ黒な瞳。日に焼けた肌、地面に広がる黒い髪……。
そんな死体が、類々と積み重なり、ジーナの周りを埋めていた。誰もが苦悶の表情に顔を歪め、その表情のまま時が停止してしまっている。体の決定的な部分に刃を受け、出血多量のショック死がほとんどだった。
ジーナはゆっくりと死体から目を反らす。自分の掌をじっと見つめた。
この手に流れる血が、彼らを殺したのだ。
「…っ。」
ギリ、と歯を食い縛る。膝をついてしまいそうになるのをなんとか堪えた。大地は穢れてしまった。乾いた地面は大量の血を吸い込んで赤く染まっている。ここで跪くわけにはいかない。第一、何に屈するというのか。何を恐れるというのか。
「……今更じゃないか。」
ジーナはぽつりと呟いた。自嘲気味な笑みが顔の表面に薄く膜を張った。
「私は一人だ。一人でいい……。」
こんなに醜い自分。憎しみのために大勢の人間を殺した。サハールの人間なら誰でもいい。できるだけ多い方がいい。そして美香たちに同行し、計画通り多くの敵を自分の方に引き付け、一瞬で殺した。
魔女。
口の中で呟いた。何度も何度も。
この力のおかげで女だというのに騎士に推薦された。この力のおかげで優しい王に目をかけてもらい、この力のおかげで砂漠の管理を言い遣わされた。
この力のおかげで大勢の人間を殺した。
「美香、それに特に王子は、この力のことを知ったら、私を嫌いになるのかな。」
馬鹿馬鹿しい。たかが子供に嫌われたくないがために、私は彼らを先に行かせたのか。もう会わないように別れの言葉まで告げておいたのか。
「思ったより情が移ってしまったようだな。所詮私も女か……。」
ジーナはゆっくりと歩き始めた。できるだけ死体を避けて歩いたが、無理な時は容赦なく踏みつけた。そのままこの場を立ち去ろうとしたが、その時遠くの方から少女の悲鳴が聞こえ、ジーナはハッと顔を上げた。
「美香…!」

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