子供のセカイ。64
美香たちが目的地に辿り着いた時、辺りはやけに静かだった。
赤いサボテンは緑のサボテンに比べるとずいぶん小さく、二メートルあるかないかくらいの大きさだった。だが、探し出すのにそこまで苦労しなかった。
「……。」
二人は、どこかから戦いの音は聞こえてこないだろうかと耳をすました。ジーナの安否が心配で、気が気ではなかった。――見送れなくて悪かったな。ジーナはそう言ったから、もうここへは来ないつもりかもしれない。戦いの音がないということは、彼女はすでに無事にサボテン地帯を抜け、どこかへ逃げおおせたのかもしれない。
だが確証はなく、二人共がぐずぐずと領域越えを先のばしにしていた。……それがいけなかったのだ。
飛んできた毒矢にいち早く気づき、素早く剣で打ち落としたのは王子だった。
「美香ちゃん!」
美香もハッとして、慌てて想像の力を使うための媒介物を探す。しかし手近に小石は落ちておらず、駆け出そうとしたその時、目の前に残忍な男の顔がぬっと現れた。
「きゃっ!」
美香は思わず男の広い胸板を押し返そうとしたが、右手首をぐいとつかまれ、そのまま羽交い締めにあう。首に冷たいナイフを押し付けられた。
「かーわいいお嬢ちゃんだ。大人しくしといてくれよ、傷つけたくないからな。……俺の奴隷になってくれや。」
低く耳元で囁かれ、ゾクッと背筋が凍った。怖くて男の顔が見れない。
(どうしよう……誰か……誰か……!)
ドッドッと激しく心臓が鳴っている。襲ってきた二人の男を相手に、必死で応戦する王子の背中が見えた。彼はそのひ弱そうな外見からは考えられないほど俊敏に動いていた。あながち剣も見かけ倒しではないらしい。剣の柄で一人の男のこめかみを殴り飛ばし、地面に昏倒させ、もう一人の振り回された槍をかがんで避ける。しかし他にもさらに数人の男たちが王子に駆け寄ろうとしているのを目にして、美香は絶望的な気分になった。
サボテンはすぐ側にある。またサボテンの怪物を作り出せばいい。わかっているのだが、先程傷つけた大男の血まみれの体がフラッシュバックしてしまい、どうしても行動に踏み切れなかった。
(落ち着いて考えなきゃ……何も戦う必要はないんだわ。すぐ側に領域の出口があるんだから。)
この際ジーナのことはあきらめるしかない。彼女は強い。きっと無事だと信じて、美香は行動を起こした。
赤いサボテンは緑のサボテンに比べるとずいぶん小さく、二メートルあるかないかくらいの大きさだった。だが、探し出すのにそこまで苦労しなかった。
「……。」
二人は、どこかから戦いの音は聞こえてこないだろうかと耳をすました。ジーナの安否が心配で、気が気ではなかった。――見送れなくて悪かったな。ジーナはそう言ったから、もうここへは来ないつもりかもしれない。戦いの音がないということは、彼女はすでに無事にサボテン地帯を抜け、どこかへ逃げおおせたのかもしれない。
だが確証はなく、二人共がぐずぐずと領域越えを先のばしにしていた。……それがいけなかったのだ。
飛んできた毒矢にいち早く気づき、素早く剣で打ち落としたのは王子だった。
「美香ちゃん!」
美香もハッとして、慌てて想像の力を使うための媒介物を探す。しかし手近に小石は落ちておらず、駆け出そうとしたその時、目の前に残忍な男の顔がぬっと現れた。
「きゃっ!」
美香は思わず男の広い胸板を押し返そうとしたが、右手首をぐいとつかまれ、そのまま羽交い締めにあう。首に冷たいナイフを押し付けられた。
「かーわいいお嬢ちゃんだ。大人しくしといてくれよ、傷つけたくないからな。……俺の奴隷になってくれや。」
低く耳元で囁かれ、ゾクッと背筋が凍った。怖くて男の顔が見れない。
(どうしよう……誰か……誰か……!)
ドッドッと激しく心臓が鳴っている。襲ってきた二人の男を相手に、必死で応戦する王子の背中が見えた。彼はそのひ弱そうな外見からは考えられないほど俊敏に動いていた。あながち剣も見かけ倒しではないらしい。剣の柄で一人の男のこめかみを殴り飛ばし、地面に昏倒させ、もう一人の振り回された槍をかがんで避ける。しかし他にもさらに数人の男たちが王子に駆け寄ろうとしているのを目にして、美香は絶望的な気分になった。
サボテンはすぐ側にある。またサボテンの怪物を作り出せばいい。わかっているのだが、先程傷つけた大男の血まみれの体がフラッシュバックしてしまい、どうしても行動に踏み切れなかった。
(落ち着いて考えなきゃ……何も戦う必要はないんだわ。すぐ側に領域の出口があるんだから。)
この際ジーナのことはあきらめるしかない。彼女は強い。きっと無事だと信じて、美香は行動を起こした。
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