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消えた30の瞳 ?

[394]  内田俊章  2009-09-16投稿
 「オヤジが、自分で自分の居る場所を教えてくれたんだ」

 2人は、父親に向かって、手を合わせた。

 「オヤジ!直ぐに引き上げてあげるからな」

 矢口がそう言うと、野崎も頷きながら、スコップを手に持った。

 その時「グオーン、グオーン!」と言う音と共に、さっきの地震とは違う、足元の揺れを感じた。

 2人は慌てて、固い雪渓の上に避難した。

 どうやら、雪渓の下で、何かが起こっている様だった。

 「オヤジさんが、怒ってるのかな?」

 「そうかもな!」

 矢口はそう言うと、父親が居た穴を、再び覗き込んだ。


 「ウオー!」

 その声に驚き、野崎も覗き込んだ。

 「ウワー!」

 2人が見た光景は、地獄その物だった。

 新しい雪渓が、内側で大量に崩れたらしく、水位が上がっていた。

 そして、2人が目撃したのは、矢口の父親だけではなく、水面で揺れ動く無数の遺体だった。

 2人は驚き、腰を抜かして、その場所に“ヘナヘナ”と座り込んでしまった。

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