もしも明日が1-3
夜、月明かりの下を駆ける一つの影が秋津高校の門を飛び越える。
「さて、違法異能力者は…っと」
見事不法侵入を果たした火葉は何食わぬ顔で校内を歩き回り始めた。
「んー…もう帰ったのか?」
あちこち歩いてみるが人影すら見当たらない。
何も相手が夜に行動を起こすとは限らないのだ。
「……帰るか。」
そう言って振り向いた瞬間、後頭部に強い衝撃を受けた。
「な…隠れて…いたのか…」
目の前が霞んできて相手の顔が見えない。
誰かが歩いてくる音がする。
女のようだ。
シャ…
刀を抜く音。
自分の人生はここまでかと覚悟を決める。
意識を手放す直前、今朝聞いた鈴の音が耳を掠めた気がした。
「う…」
酷い頭痛がする。
「あー…ここは天国か?」
「残念。
天国には逝き損ねたわよ。
逝きたいなら逝かせてあげるけど?」
女の声がしてハッと前を見る。
若干物騒なことをさらりと口にした人物は火葉の見覚えのある人物だった。
「君…今朝の…」
「正解。
それよりもさっきの、傷は負わせたけどまだ生きてるしアンタを探してる。」
「そうだ違法異能力者!」
「慌てないで。
今のアンタは怪我をしてる。
相手の能力が分からない以上、今行動を起こすのは自殺行為よ。」
「…わかった。
でもそれならどうしろって?」
火葉の問いに少女は人差し指を唇に当てて楽しそうに笑って言った。
「私にまっかせなさい」
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