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君からの手紙〜65〜

[361]  YOSI  2009-09-19投稿
そこに立っていたのは石田だった。
店長と勇一以外は、驚きの表情を見せた。
勇一は、なんとなくわかっていたからだ。
「石田さんが『秀さん』…本当に…本当にそうなんですか?あなたが…」
幸子は、思わぬ形で、出会えたことに、驚きが隠せなかった。
嶋野と紀子も、彼が現れたことに驚いた。
「皆さん、驚かせてしまって、すみません…俺は…俺は昔、ある曲をストリートライブで、思いを込めて歌ってました…それから、音楽の夢を、あきらめたくなくて、レコード会社にいました…俺は早くに、母を亡くして、母への思いもあって、曲を書いたんですが…」
石田は、少し間を置いて切りだした。
「俺は、申し訳なく思ってます。俺の作った曲で、2つのつらい思いがあったこと…出来れば、永遠に葬っていたかった…」
「でも…俺や、夕樹さんが現れた。つらかったでしょうね…」
「そうかもしれません。…でも、これも運命だと思いました。…ただ、俺が皆さんが探している男であることに、気づかないでいてくれればと、思ってました…今までは」
「吹っ切れたんですね」
勇一の問いに、石田は、大きく頷いた
「俺が現れて、皆さんの、これからが、不幸になったりすることが怖かった…でも、乗り越えなきゃいけないこともあるって、ある人が俺を、後押ししてくれました」
そう言いながら、石田は、和枝の方を見た。
和枝も大きく頷いた。
「石田さん…俺はもう覚悟出来てますよ。この先どんな未来が待ち受けていようとも。俺は…きっと、あなたを待ち続けていたんです。由美が愛した曲を…」 「私もです…利夫が大切に思っていた曲を、待っていました…だから歌ってください」
「俺からもお願いします。天国にいる、由美や奥村さんに向かって…」
勇一、幸子、嶋野の願いに、反論するものは、誰もいなかった。
「石田さん…俺も聞きたいです。勇一が愛した人の、大好きだった曲を…」
そう正が言った後に、佐野も「石田さん…ずっと背負っていたものがあったんだね。思う存分歌ってよ」と、後押しした。
石田は、深く一礼した。
「ありがとうございます…きっともう歌うことは、ありません。最後に、皆さんに、天国にいる、由美さんと利夫に向けて歌います…『君からの手紙』を」

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