僕らのこと?
松本くんは、いつも優しかった。私が出来ないことは全部やってくれて、嫌な顔一つ見せなかった。だから私は、それに甘えていた。
あの日、何故一馬に唇を近づけたのか分からなかった。ただどうしても、あの思い詰めたような顔つきに、どうしようもなくひかれた。
思わずつまずいたと嘘をつき、その場をやり過ごしたが、松本くんと会っている間は、その嘘が胸の奥でずっと音を立てていた。
「さいちゃん、ノーゼスのチケット取れたよ。一緒に行く?」
「行きたい!でも、親に聞いてみないと……」
「そうだよね。一緒に行けるといいね」
ノーゼスは元々松本くんがファンで、自然と私も好きになったインディーズバンドだ。
ずっと一緒にライブに行きたいと、遊ぶ度に話していた。
こうやって、私は徐々に彼の影響を受けた。
小学校の時とは違う、とても途方もなく遠い世界が、急に近くなった優越感みたいなものが私の中には常にあった。
勿論、私が女として芽生えるきっかけになったのも、彼だ。
それは彼の部屋でDVDを見ているときだった。
「さいちゃん」
「なあに?」
私はジュースを飲みながら、何の疑問もなく応答した。
「キス、してみよっか」
「え?」
と言う前に、私の唇には柔らかい感触があった。
瞬間に、一馬の顔が何故かよぎって、すぐに離れた。
松本くんはけげんそうな顔をして、脱力した。
「やっぱり、ダメだよね」
「ううん。……びっくりしただけ。もう一回して」
私が何気に言った言葉で、松本くんは顔を真っ赤にした。
そしてうずくまって黙ってしまった。
「え、何で何で。どうしたの?」
「ううん、何でもない」
そう言って私の肩を、自分の方に引き寄せた。
それまで感じなかった熱いものが、急に込み上げてきて私の胸を締め付けた。
やっぱり好きだな、と思った。
結局、何もないままだったが、すぐにその日は来て私は、少女を捨てた。
あの日、何故一馬に唇を近づけたのか分からなかった。ただどうしても、あの思い詰めたような顔つきに、どうしようもなくひかれた。
思わずつまずいたと嘘をつき、その場をやり過ごしたが、松本くんと会っている間は、その嘘が胸の奥でずっと音を立てていた。
「さいちゃん、ノーゼスのチケット取れたよ。一緒に行く?」
「行きたい!でも、親に聞いてみないと……」
「そうだよね。一緒に行けるといいね」
ノーゼスは元々松本くんがファンで、自然と私も好きになったインディーズバンドだ。
ずっと一緒にライブに行きたいと、遊ぶ度に話していた。
こうやって、私は徐々に彼の影響を受けた。
小学校の時とは違う、とても途方もなく遠い世界が、急に近くなった優越感みたいなものが私の中には常にあった。
勿論、私が女として芽生えるきっかけになったのも、彼だ。
それは彼の部屋でDVDを見ているときだった。
「さいちゃん」
「なあに?」
私はジュースを飲みながら、何の疑問もなく応答した。
「キス、してみよっか」
「え?」
と言う前に、私の唇には柔らかい感触があった。
瞬間に、一馬の顔が何故かよぎって、すぐに離れた。
松本くんはけげんそうな顔をして、脱力した。
「やっぱり、ダメだよね」
「ううん。……びっくりしただけ。もう一回して」
私が何気に言った言葉で、松本くんは顔を真っ赤にした。
そしてうずくまって黙ってしまった。
「え、何で何で。どうしたの?」
「ううん、何でもない」
そう言って私の肩を、自分の方に引き寄せた。
それまで感じなかった熱いものが、急に込み上げてきて私の胸を締め付けた。
やっぱり好きだな、と思った。
結局、何もないままだったが、すぐにその日は来て私は、少女を捨てた。
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