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あなたがいるだけで。?

[204]  ゆう  2009-09-24投稿
翌日、いつもよりはやく起きて、泣きはらした目を冷たいタオルで冷やす。

冷やしても大して治らない目のまま、今日は登校する。


花が言ってくれた。

よく頑張ったって。

泣いちゃって、情けないような告白だったけど、でも自分でも、頑張ったって思えるようになった。
花のおかげで…。




「優!おはよ!」

「おはよう。花」

花は私の顔を見て、何も言わずに私の頭をくしゃっとなでた。


「廣瀬!おはよっ」
明るく木村くんが声を掛ける。
私は俯いて、顔を見られないようにしている。
「おはよう」

「廣瀬、風邪?昨日休んでたからさ。だいじょぶか?」
「う、うん。もう平気」「無理すんなよ」
軽くポンと肩を叩いて、木村くんはまた別の友達の所へ走っていった。





いつものように筆に油絵の具を乗せ、筆を運ぶ。
今描いているこの絵は、泣きたくなるような…
でも幸せな気持ちになるような…
そんな気持ちにさせた。

「桜」

後ろから花が声を掛ける。
「優、桜の絵を描いてたんだね。初め全体が水色と白だけだったから分からなかった」

「うん。初め空だけだったから。」

花が絵をのぞき込んで見ている。



「この桜…」
「ん?」

思い出した。


「この桜、入学式の時に見た桜なの。青空に白いピンクが映えて…」
「そうえば綺麗だったよね」
笑顔で花が応える。
「花びらが舞ってる校庭で、空を見上げている人がいたの」

私のずっと心の奥にある、色あせることのない、絶対的なもの。

「その姿があんまり綺麗で…見とれてた…」

花は黙って話を聞いている。

「その時から、その人のこと無意識に目で追うようになって…」

筆を進めながら、思い返しながら、ゆっくり話す。
「朝、その人と会えると、嬉しくて。今日はツイてるって。いつもと一日の始まりが違うの」

ふっと笑いながら、私は言葉を続ける。

「体育祭のときは声に出せないけど、その人のことを心の中で応援したり…」

「授業中、その人のクラスが体育で、窓から姿を見れるのも嬉しかった」
「時々、目があったりすると、ほんとに嬉しくて…」


好きな人がいること、想える人がいたことで、私の高校生活は、素晴らしいものになった。

大嶋くんのおかげで…。

私の高校生活はすべて、大嶋くんを中心に回ってた。







続く

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