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子供のセカイ。70

[375]  アンヌ  2009-09-30投稿
耕太。
美香は、今まですっかり忘れていたことに愕然とした。罪悪感が手足の中を気味悪く這う。美香は言い訳をするように叫んだ。耕太がまだ闇の中に閉じ込められたままなの!それに舞子も助けなきゃいけない。だからちっとも大丈夫なんかじゃ――。
「大丈夫よ。目を開けて。」
美香。


ハッと目を見開く。そこには石でできた高い天井があった。
「……あ…… 、」
「気がついたようね。」
静かな声が石造りの部屋にこもって響いた。美香は顔を横に向ける。アンティーク風の木の椅子に、中年女性がしとやかに足を揃えて座っていた。
美香は自分がシルクのベッドの上にいるのに気づいた。身を起こすとサラサラとシーツが鳴った。体がずいぶん楽になっていた。だが、逆にそのことに違和感を感じる。大体、さっきまで寂れた岩とサボテンと砂漠の広がる風景の中にいたのに、これは一体どういうことなのだろうか。ここはどこだろう。みんなは――……?
美香は体ごと中年女性の方に向き直り、咳き込む勢いで質問を浴びせようとした。しかしその時、彼女の焦げ茶色の瞳が海のように静かなことに気づいて、思わず言葉を呑んでしまった。
「どこも、痛い所はない?」
不思議な女性だった。穏やかな声は潮騒のようだった。海だ。この人の何もかもが、海……。ショートにした焦げ茶色の髪に、彫りは浅いがどこか謎めいた印象的な顔。黒目の部分が大きいからそう見えるのだろうか。聖職者が着るような白いゆったりとした衣を羽織っている。背筋はぴんと伸び、全体的にほっそりしていて、柳の木のように上品だった。
「体は平気です。それより、あの、」
「大丈夫よ。ジーナも王子も生きてる。二人ともちゃんとした治療を受けて、今は安静にして寝ているわ。」
大丈夫。そう言った声は、さっき夢の中で聞いたものと重なって美香の中で響いた。
「大、丈夫…。」
「そう。だから安心して。」
「ここはどこなんですか?」
「ここは“生け贄の祭壇”よ。」
美香は思わず息を飲んだ。それから、困惑して女の人の目を見つめた。
「で、でもジーナは来ないって……何で彼女が“生け贄の祭壇”に?それより、一体どうやって……?」
「そうね。説明しなければあなたは安心して眠れないかしら?」
中年女性はふわりと優しく微笑んだ。美香は子供扱いされたようで少し恥ずかしくなった。

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