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アキ 1

[343]  ゆう  2009-09-30投稿
この話は誰にも言っていない。

親友にすら、言っていない。


私だけの秘密…。




山科透。
33歳。
現在、絵画教室の講師として働いている。
毎週水曜日、午後1時〜4時まで。
人付き合いが下手な私にはちょうどいい。

そう思っていた時に、彼が現れた。



金髪にピアス…
身長180センチあるだろうか…
今時の男の子…
苦手なタイプだ。

この子、教室間違えてるんじゃないかな…

「あの、どうされました?」
「あ、俺、今日、絵画教室の体験で申し込んだ名波です」
「!…名波アキさん?」「はい」

今日、体験でひとり来るとは聞いていたけど…名前からして女の子が来るのかと思ってた…。

「どうぞお入りください」
「ども」
「今日は体験ですので、教室内にある好きなモチーフを選んで、デッサンしてみてください」
「分かりました」


申し込み用紙に目を通す。
名波アキ。
21歳。
K大学3年。
デッサン希望。

K大…医療系大学だ。
芸大とかではないのね。
この子、どんな絵を描くのかな…。


ふと彼の方に目をやると、彼は私の方を見ていた。

「何を描いてるんですか?」
「あなた」
「え?」
「先生を、描いてます」「!」

彼のスケッチブックを見ると、この短時間で私が申込書に目を通している姿が描かれていた。

力強い線。
殆どが迷いのない一筆書き。
彼の芯の強さを表しているようだった。


この時の感情を、何と言ったらいいのだろう。

一気に彼の絵に、魅せられてしまった。




アキとは、こうして出会った。



続く

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