アキ 8
女と遊んでいる時は、家のことも将来のことも忘れられた。
その時が楽しければ、それでよかった。
今思えば、いろんな事から逃げたかっただけだったように思う。
俺の周りには『名波総合病院の跡継ぎ』って肩書きだけで近づいてくる女はたくさんいた。
遊ぶ女には困らなかった。
でも…それも長くは続かなかった。
段々虚しくなっていった。
まぁ当然だ。
好きでもない女と寝てるんだから…。
俺は家のしがらみから抜け出せないでいた。
親の期待に背くことが出来ないまま、K大医学部へ進学。
もう…自分の夢も忘れかけていた。
このまま医者になって、病院を継げば何もかも丸くおさまる。
それが一番いいんだ…。
そんな事をぼんやり考えていたときに、あの絵に出会った。
絵画教室の展示スペースに貼られていた一枚の絵。
まるで俺のために描いた絵のように思えた。
男が正面を向いて立っている。
男の前には、男の背丈くらいある高く伸びた草木が生い茂り、広がっている。
その先に見える物は、青空に光る太陽、白い雲。
タイトルは『道』
俺は、本当は、ずっと絵が描きたかったんだ。
その時、自分の夢を取り戻すことができた。
続き
その時が楽しければ、それでよかった。
今思えば、いろんな事から逃げたかっただけだったように思う。
俺の周りには『名波総合病院の跡継ぎ』って肩書きだけで近づいてくる女はたくさんいた。
遊ぶ女には困らなかった。
でも…それも長くは続かなかった。
段々虚しくなっていった。
まぁ当然だ。
好きでもない女と寝てるんだから…。
俺は家のしがらみから抜け出せないでいた。
親の期待に背くことが出来ないまま、K大医学部へ進学。
もう…自分の夢も忘れかけていた。
このまま医者になって、病院を継げば何もかも丸くおさまる。
それが一番いいんだ…。
そんな事をぼんやり考えていたときに、あの絵に出会った。
絵画教室の展示スペースに貼られていた一枚の絵。
まるで俺のために描いた絵のように思えた。
男が正面を向いて立っている。
男の前には、男の背丈くらいある高く伸びた草木が生い茂り、広がっている。
その先に見える物は、青空に光る太陽、白い雲。
タイトルは『道』
俺は、本当は、ずっと絵が描きたかったんだ。
その時、自分の夢を取り戻すことができた。
続き
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