喋るボーリングの球
あいつが俺の家に来た時、俺たちは優奈をめぐって大喧嘩をした。
「優奈は俺のものだ!」
そう叫んだ俺は、近くにあったボーリングの球を持ち上げ、あいつの頭目掛けて思い切り振り下ろした…。
あいつはバタリと倒れ込んだ。死んだ、はずだった…。
「何しやがる!どうなってんだ!?」
…………!
手に持つボーリングの球から、なぜか、あいつの声が…?
しばらく考えた結果、俺はある結論に至った。
頭を殴った衝撃で、あいつの意識がボーリングの球に移ってしまったのだ。
そして、ボーリングの球が再び喋り始めた。
「こうなってしまったからには、仕方がない。さっきは悪かったな。おれだって鬼じゃないさ、お前と優奈を結婚まで導いてやるよ」
それからあいつは、自身の遺体の処理などについても丁寧に指示してくれた。
数日後、俺は優奈とデートをした。場所は、ボーリング場だ。
「優奈、この1球でストライクを出したら、俺と結婚してくれ」
俺はあいつの宿った球を持ちながら、プロポーズをした。
「えっ!じゃあ、もし、ストライクじゃなかったら…?」
優奈が不安げに訊いてきた。俺はあいつのシナリオ通りに答える。
「その時は別れよう…。それぐらい真剣だよ」
そしてついに、運命の時。
「おい、大丈夫なんだよな?」
俺がそう訊くと、
「任せとけ。お前はただおれを投げてくれればいい。あとはおれが自力でピンを全て倒すぜ!」
とあいつが答えた。俺はそれにそっと頷いて、あいつを投げた。
球は勢い良く転がっていく……と思ったら、急激にスピードが緩んで、左にユルユルとそれてしまった。
俺はとっさに優奈の方を見た。
「何よ、それ。わたし、帰る!」
そう言い残して、優奈は本当に帰って行った。
「何がストライクだよ!ふざけるな!」
俺は戻ってきたあいつに怒鳴った。それでもあいつは冷静だった。
「そう簡単に、優奈を渡すかよ」
ボーリングの球が、俺に向かってポツリと言い放った。
俺は、上手く球を転がすどころか、
球に上手く転がされた気がしたのだった。
「優奈は俺のものだ!」
そう叫んだ俺は、近くにあったボーリングの球を持ち上げ、あいつの頭目掛けて思い切り振り下ろした…。
あいつはバタリと倒れ込んだ。死んだ、はずだった…。
「何しやがる!どうなってんだ!?」
…………!
手に持つボーリングの球から、なぜか、あいつの声が…?
しばらく考えた結果、俺はある結論に至った。
頭を殴った衝撃で、あいつの意識がボーリングの球に移ってしまったのだ。
そして、ボーリングの球が再び喋り始めた。
「こうなってしまったからには、仕方がない。さっきは悪かったな。おれだって鬼じゃないさ、お前と優奈を結婚まで導いてやるよ」
それからあいつは、自身の遺体の処理などについても丁寧に指示してくれた。
数日後、俺は優奈とデートをした。場所は、ボーリング場だ。
「優奈、この1球でストライクを出したら、俺と結婚してくれ」
俺はあいつの宿った球を持ちながら、プロポーズをした。
「えっ!じゃあ、もし、ストライクじゃなかったら…?」
優奈が不安げに訊いてきた。俺はあいつのシナリオ通りに答える。
「その時は別れよう…。それぐらい真剣だよ」
そしてついに、運命の時。
「おい、大丈夫なんだよな?」
俺がそう訊くと、
「任せとけ。お前はただおれを投げてくれればいい。あとはおれが自力でピンを全て倒すぜ!」
とあいつが答えた。俺はそれにそっと頷いて、あいつを投げた。
球は勢い良く転がっていく……と思ったら、急激にスピードが緩んで、左にユルユルとそれてしまった。
俺はとっさに優奈の方を見た。
「何よ、それ。わたし、帰る!」
そう言い残して、優奈は本当に帰って行った。
「何がストライクだよ!ふざけるな!」
俺は戻ってきたあいつに怒鳴った。それでもあいつは冷静だった。
「そう簡単に、優奈を渡すかよ」
ボーリングの球が、俺に向かってポツリと言い放った。
俺は、上手く球を転がすどころか、
球に上手く転がされた気がしたのだった。
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