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彼とカレ。2

[269]  あや  2006-08-04投稿
いけないことだと、わかっていた。
彼を失うかもしれないと、頭ではわかっていた。それでも、わたしはカレと話をしたかった。隣にいてみたかった。
彼とは違うカレ。
彼にはない、独特の雰囲気を持つカレ。
ないものねだりなのだろうと、思う。
けれど、わたしはカレの持つ独特の雰囲気に触れてみたいと思ったのだ。
一言。
「一人で帰れます。」と、言えばよかったのに。
わたしは、カレに甘えてしまった。
二人きりになっても、彼にたいするようなドキドキ感はほとんどない。
カレはきっと、兄のような存在ではないかと思う。わたしに兄はいないが、兄がいたら、カレのように大人で優しくて包み込んでくれるような相手なのだろう。そしてまた、どこか恋愛に発展する一歩手前のような、楽しい駆け引きをしているような感覚でもあった。

日曜日の夜。
一人で出かけたコンサートに、偶然カレも来ていた。
話の流れから帰り送ってもらうことになったのが、わたしとカレの始まりだったように思う。
車を運転するカレの姿は、普段見慣れない格好をしていることもあって、とても新鮮でかっこよかった。車内で流れている曲もわたしの大好きな曲だったし、気が合うのかなと勝手に思ってみたり。
時間は夜の10時を少し回っていて、お腹も空いていたわたしたちは自然と食事に行こうということになった。
少しのドライブを楽しみながら、わたしたちは本当に楽しい時間を過ごした。少なくとも、わたしは楽しかった。
到着したレストランに入ると、席は埋まっていて少し待たなければならなかった。わたしは、入り口に置いてあるメニューを覗き込み、何を食べようかと思ったとき。
いきなり後ろから腕を引っ張られ、気が付くと店の外に出ていた。
腕を引っ張ったのは、もちろんカレだ。
あまりにも急で、あまりにもドラマチックでドキドキした。その展開がなければ、こんなにもカレのことを意識することなど、なかったのかもしれない。

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