「 」
―――――――10年前。
死のう。
生きていたって、
意味が無い。
そんな私の心を促しているのか、背中から風が私を前へ前へと押している。
緑色の金網に手を掛ける。
後は簡単だ。
これをよじ登って、そこから落ちればいい。
ん?
上手く登れない。
ああ、靴下を履いたままだった。
靴下を脱いで……………
そういえば、自殺する人は靴を並べるんだっけ?
まぁ、サンダルだけど同じか……
一歩、また一歩とよじ登り楽園へと近付く。
そして、生死の境界線に辿り着いた。
後、一歩。
後、一歩で逝ける。
お母さんの所に。
「あっ! アンパンマンがあんパン食べてる!」
「えっ?」
なんて後ろを振り返って見ても、そんなものはなかった。
体に異変を感じた。
背中が妙に寒い。
なんか、胃が浮く感じだ。
ふと前を向いて見ると、一面空が見渡せた。
悲鳴をあげる時間もなく、私は落ちた。
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