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享年六十歳

[429]  吉田 奈緒子  2009-10-10投稿
二年前に父が亡くなりました。

寒くなりつつある十一月の終わり頃。

癌と闘いながらの一年でした。

その年の一月、母と二人で北海道旅行へ、しんどいと言いながらも行きたい場所には行けたようで写真はしっかり撮ってありました。

お腹のはりが覆水と気付き、入院したのが七月頃。検索と転院を繰り返す日々が続きながらも、帰宅出来る時には大好きな家に帰って寛いでました。

まぁ、手術していつもの生活に戻るだろうと家族全員が思っていました。

十月、入院が続くうち、訳あって疎遠になっていた父の母、祖母と初めて会う事になりました。

私と姉が父の病室に見舞いに来た、祖母と叔母に挨拶をし、父が『僕の誇りです』と祖母達に挨拶していました。

花に水を入れに行く為に病室を出ると、訳も分からず涙が溢れてきました。自分の体は自分がよくわかるという言葉があるように、父には分かっていたのかと思うと今でも涙が止まりません。

最後を迎えた病室での現実を受け入れられない人の心と頭は虚無感にに包まれ、ただただ、信じられない一心で叫びつづけるしかなかったです。

『帰って来て、置いて行かないで』

今でもあの時の母の声が耳について離れないです。一番悲しい思いをしたねはやはり長年連れ添った母です。ずっと『何で、何でなの』と泣き続けていました。

今、それぞれが普段の生活を取り戻しつつありますが、母は父の物を片付ける事はせず、父の部屋で日々を過ごしています。

愛とは深く悲しいものでもあるのだと分かりました。

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